研究課題/領域番号 |
23791917
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 輝久 福島県立医科大学, 医学部, 研究員 (80508812)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 移植 / 再生医療 |
研究概要 |
気管の再建方法としてコラーゲンスポンジとコラーゲンメッシュからなる人工気管による再建を行い臨床応用に至っているが、問題点は上皮化の遅延が挙げられる。気管再建部の上皮化促進と再生促進を図るため、線維芽細胞と脂肪組織由来細胞を使用することとした。ラットの腹部・そけい部から脂肪組織を採取し、酵素分散法にて脂肪組織を分解後、成熟脂肪細胞を除去、沈殿画分をセルストレーナーで濾過して得られた細胞がstromal vascular fraction(SVF)といわれる細胞群であり、この細胞群を3世代の継代培養を経て脂肪組織由来幹細胞(ASC)を十分量回収できた。誘導培地を以下のように試薬調整により作製した。軟骨細胞誘導を行う場合は、Insulin、TGF-beta1を使用。神経細胞誘導を行う場合は、beta-mercaptoethanolを使用。脂肪細胞誘導を行う場合はInsulin、dexamethasone、IBMXを使用した。また、骨細胞誘導を行う場合は、dexamethasone、glycerol phosphate、ascorbic acidを使用。それぞれの培地で分化誘導を行い軟骨細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞等に誘導分化させ多分化能を確認できた。ラットの歯肉粘膜下層から組織片培養にて線維芽細胞を単離し培養を確立した。培養した線維芽細胞をI型コラーゲン溶液に懸濁しゲル化させ、気管上皮細胞を播種し、上皮細胞がコンフルエントに達するまで通常培養を行うことができた。今後は、同培養法を発展させ、さらに気管上皮の形態形成を促進するために空気暴露培養をおこない、それぞれの細胞の相互作用を評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定した研究実施計画とほぼ一致した達成度が得られたと評価できる。しかし、各細胞群の共培養が進行中であり、評価を行う時点までは達していない。その事由として当研究機関は震災被災後、災害救助の拠点として機能し、また、現時点でも原発事故関連の対応協力行っており、様々な時間的・人材的な制約と物流の制約を受けた。本年度以降も特に原発事故関連の協力体制を強化しており、時間的・人材的な制約が予想されるが、震災の復興に大きく努力しそれとともに本研究の充実を図る考えである。
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今後の研究の推進方策 |
ASC・SVFと繊維芽細胞が上皮細胞の分化に及ぼす影響をそれぞれの細胞を共培養し評価をおこなう。気管上皮の構成細胞である線毛細胞、杯細胞および基底細胞に特異的なβ-tubulin IV、keratin14およびMU5ACを測定しASC・SVFが気管上皮細胞に及ぼす影響を評価する。正の相乗効果が期待できるが、本研究の基盤となる点であり、培地の調整、培養期間など入念に評価を行う予定である。共培養で気管上皮細胞の培養促進効果が確認された場合、細胞層状配列構造(ハイブリッド3次元培養)の開発を行う。本過程では培養細胞の調整量が多く必要になることが予想され、恒温器の確保、培養液量の短時間調整を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
時間的な制約がある場合には、実験過程において、ラットのASCの採取が困難な場合も予想される。あらかじめ単離されたヒトのASCを用いて、ヌードラットに移植し、実験を継続していくことも考慮し、それらASC細胞やヌードラットの購入に、研究費をあてることも考慮している。また、学会などに積極的に参加し、実験に役立つ情報を得るための旅費にも使用を予定している。その他、試薬や恒温器の購入にもあてる予定である。
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