研究概要 |
ラットの歯肉粘膜下層から組織片培養を行った線維芽細胞(FB)とラットの腹部・そけい部から脂肪組織から得られた細胞群(SVF)を3世代の継代培養を経て脂肪組織由来幹細胞(ASC)をそれぞれラット気管上皮細胞と共培養を行った。FBまたはASCをI型コラーゲン溶液に懸濁、ゲル化させ、その上層で気管上皮細胞がコンフルエントに達するまで通常培養し、上皮の形態形成を促進するため空気暴露培養を行うことに成功した。 FBと共培養した場合、正常気管上皮である偽多列線毛上皮層の形成を促進させた。ASCと共培養した場合は上皮の厚みと上皮基底細胞数を増加させたものの偽多列線毛上皮層の形成は認められなかった。FBが気管上皮の線毛、杯、基底細胞の分化指標であるβ-tubulin IV, MUC5AC, keratin 14の発現に与える影響をreal-time PCRで測定した。気管上皮細胞単独の場合、いずれの分化マーカーの発現も低い数値を示したが、共培養を行った場合は、3種の遺伝子とも高い発現レベルを示し、気管上皮細胞への誘導能が確認された。同様にASCが気管上皮細胞のβ-tubulin IV, MUC5AC, keratin 14の発現に与える影響をreal-time PCRで測定した。β-tubulin IV, MUC5ACの発現量は気管上皮細胞単独の場合より減少し、keratin 14の発現量はFBと共培養した場合より増加していた。FBは気管上皮の分化誘導にASCは上皮細胞増殖に促進的に働くことが確認された。この2種の細胞を利用し細胞層状配列構造(ハイブリッド3次元培養)をおこなった。ポリプロピレンメッシュにFB、またはASCを含むコラーゲンゲルを層状に作製することができた。現在、移植に際して、基底層側、上皮層側どちらにどの細胞を配置した方が有効であるか検証中である。
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