研究概要 |
線維芽細胞とASCの長所を同時に生かすためポリプロピレンメッシュにコラーゲンを付加した材料上にASCを含むコラーゲンゲルを被覆し、その上に線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを重層することで、ハイブリッド3次元培養である細胞層状配列構造を作製した(3D architecture of cell layered arrangement:3D-A)。その際、高い血管新生能をもつASCを下層側に、高い上皮分化能をもつ線維芽細胞を上層側にした。線維芽細胞、ASC・SVFを採取したラットを用い、頸部組織を高周波メスで切除・凝固することによって気管の傷害モデルを作製した。気管欠損部分に3D-Aを移植した。移植1、2週間後に再生気管を摘出し、組織学的・免疫組織学的に評価を行い、また、走査型電子顕微鏡を用いて形態的に評価した。移植1週間後では、3D-Aでは、線維芽細胞、ASCを単独で用いた場合よりも発達した上皮細胞層が形成され、上皮細胞の増殖を高める結果であった。同標本に関して血管新生について評価すると移植1週間後では、3D-Aの血管新生能は、ASC単独移植よりも発達している様子が観察された。移植2週間後には線維芽細胞、ASC、3D-A移植群に血管形成にはほとんど差がなく、3D-Aは移植の早い段階で血管新生を促進すると考えられた。また、移植2週間ではどの移植群も偽多列線毛上皮を再生していたが、走査型電子顕微鏡による観察ではASC,線維芽細胞単独の移植に比べ、3D-Aでは、発達した線毛を有する細胞がより密度高く存在していた。 3年間の本研究から、線維芽細胞、ASCを単独で移植するより、その2つの細胞群を用い細胞層状配列構造を作製した3D-Aを移植することにより早期に正常形態に近く、機能的な気管上皮層を形成することが確認され、気管再生医療に大いに貢献できる結果が得られた。
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