研究課題/領域番号 |
23791918
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
野本 美香 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (50554416)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医療 / 軟骨 / 喉頭 |
研究概要 |
我々はポリプロピレンの骨格に足場となるコラーゲンスポンジを付加した組織再生誘導型人工気管を開発・臨床応用を行い概ね良好な結果を得ている。しかし骨格として用いられているポリプロピレンが非吸収性であり成長にあわせて大きくなることが無いため、小児は適応外としている。軟骨細胞で骨格を形成することができれば小児への応用が期待できる。 今回の研究では自家軟骨細胞を用い喉頭の軟骨の再生をめざす。平成23年度はIn vitroでの軟骨細胞を有する培養喉頭軟骨の作製を中心に実験を行った。〔細胞の採取〕軟骨細胞の採取:全身麻酔下に、ウサギの肋軟骨・耳介軟骨を採取し、軟骨膜を取り除いた後コラゲナーゼ処理し浮遊する軟骨細胞を濾過、採取した。〔培養〕10%FBSを含んだF-12細胞培養液等を用いて回収された細胞の継代培養を行った。〔培養喉頭の作製〕I型コラーゲン溶液に再構成用緩衝液及び培養軟骨細胞を混合し軟骨細胞含有コラーゲン溶液を作製した。コラーゲン溶液は37℃でゲル化するものを用いた。ウサギ用に作製した自己組織再生型人工気管を足場材料とし、軟骨細胞含有コラーゲン溶液を足場材料に浸透させゲル化させ、培養した。〔標本作製・評価〕培養組織片の凍結切片及びパラフィン切片標本を作製した。H-E染色やアルシアンブルー染色にて軟骨組織の構造を評価した。2週間後、4週間後、6週間後で標本を作製し軟骨細胞の数を比較した。両者の細胞数に大きな差はなかった。また、2週間後と比べ6週間後でも軟骨細胞の著名な増殖はなかった。以上より耳介軟骨細胞と肋軟骨細胞の増殖の程度は大きな差がなく、気管軟骨の再生の細胞源としては気管軟骨と同じ硝子軟骨である肋軟骨が適当であると考えられた。また、足場となるコラーゲンに細胞を注入後培養しても、細胞の著名な増殖は認めなかったため、注入後の培養は効果的ではないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)軟骨組織の採取方法が確立ができた。全身麻酔科にウサギから肋軟骨と耳介軟骨を採取する方法を確立した。全身麻酔下に肋軟骨・耳介軟骨を採取した後に問題の起こったウサギはおらず、前例生存した。自家移植の細胞源として肋軟骨・耳介軟骨を採取する手技を確立できた。(2)軟骨細胞の培養方法を確立することができた。耳介軟骨細胞、肋軟骨細胞を10%FBS含有D-MEMを用いて継代培養する方法を確立した。軟骨細胞は2回の経代で十分量培養することが可能であった。(3)新規培養喉頭の作成:培養軟骨細胞を含有したコラーゲン溶液は37℃でゲル化するため、移植に適当な新規培養気管を作製することができた。培養組織片の凍結切片及びパラフィン切片標本を作製した。H-E染色やアルシアンブルー染色にて軟骨組織の構造を評価し軟骨細胞が増殖していることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoで、ウサギの喉頭欠損部への培養喉頭の移植実験を中心に行う。〔細胞の蛍光標識〕移植細胞を宿主細胞と区別・同定できるように、レンチウイルス等をベクターとした遺伝子導入技術を用いて、培養軟骨細胞と培養線維芽細胞に蛍光蛋白(GFP、YFP等)や発光蛋白(ヒカリコメツキムシ由来ルシフェラーゼなど)の遺伝子を導入する。〔培養喉頭の作製〕標識された培養軟骨細胞培養線維芽細胞を用いて平成23年度同様に培養喉頭モデルを作製する。〔喉頭欠損モデルの作製〕全身麻酔下に喉頭・頸部気管を露出させ、輪状軟骨を開窓する。喉頭欠損の大きさは約5.0×9.0mmとする。〔喉頭再建〕培養喉頭が喉頭欠損部を覆うよう留置し6-0ナイロン糸で喉頭と縫合する。〔バイオルミネッセンスイメージングによる評価〕移植後7日、14日、30日、60日を目安に全身麻酔下にルシフェリンを投与し、高感度カメラにてルシフェラーゼとの反応による蛍光を観察し、軟骨組織の経時的変化を同一個体で評価する。〔標本採取〕観察期間(移植後7日、14日、30日、60日)の後にネンブタール過剰投与により安楽死させた後、喉頭を摘出する。〔標本作製・評価〕摘出した喉頭の凍結切片及びパラフィン切片、SEM用の標本を作製する。H-E染色やトルイジンブルー染色、サフラニンO染色での形態観察を行う。蛍光顕微鏡にて蛍光標識した細胞を経時的に評価する。免疫染色(type II collagen,cytokeratin, von Willebrand Factor)、SEMにて軟骨組織の構造、再生喉頭の層構造を評価する。形質的評価としてはRT-PCR(type II collagen、aggrecan)などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物・薬品類・実験器具の購入 450,000円成果発表・調査研究のための学会旅費 300,000円成果発表のための投稿料、英文校閲料 150,000円
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