我々はポリプロピレンの骨格に足場となるコラーゲンスポンジを付加した組織再生誘導型人工気管を開発・臨床応用を行い概ね良好な結果を得ている。しかし骨格として用いられているポリプロピレンが非吸収性であり成長にあわせて大きくなることが無いため、小児は適応外としている。軟骨細胞で骨格を形成することができれば小児への応用が期待できる。 これまでにウサギの肋軟骨から採取した自家軟骨細胞を培養、人工気管に播種し気管軟骨欠損部に移植する研究を行い、軟骨様組織の再生を確認した。今回は自家軟骨細胞を用い喉頭の軟骨の再生をめざし研究を行った。 日本白色ウサギのオスを用いた。肋軟骨を全身麻酔下に摘出し、軟骨膜を除去した後酵素処理を行い軟骨細胞を濾過・回収した。回収した軟骨細胞は10%FBS含有DMEMにて継代培養を行った。軟骨細胞の増殖状態を確認しながら2から3代の継代培養を行い、移植に十分量の軟骨細胞を得た。I型コラーゲン溶液に再構成用緩衝液および培養軟骨細胞を混合し軟骨細胞含有コラーゲン溶液を作製した。ウサギ用に作成した組織再生誘導型人工気管を足場材料とし、軟骨細胞含有コラーゲン溶液を足場材料に浸透させ、37度インキュベーター内でゲル化させた。先に肋軟骨を摘出し、軟骨を採取したウサギを用い、全身麻酔下に喉頭・頸部気管を露出させ、輪状軟骨を開窓した。喉頭欠損の大きさは5×12mmとした。軟骨細胞付加人工気管をウサギの喉頭欠損部を覆うように留置し、6-0ナイロン糸で喉頭と縫合した。移植後喉頭を摘出し、組織学的評価を行った。 HE染色、アルシアンブルー染色で確認すると軟骨欠損部の一部に軟骨組織の再生が確認できた。 今回の研究で、喉頭軟骨欠損部における軟骨組織の再生が確認できた。
|