本研究の目的は、ALSモデルマウスを用いて、嚥下・咀嚼と関連する脳幹の各運動神経核や、それらの神経核に支配される舌や咽頭喉頭の組織学的、分子生物学的解析を行い、ALSにおける嚥下障害の病態を明らかにすることである。 低発現型G93A型SOD1トランスジェニックマウスの若年(12週齢)、四肢麻痺発症前(20週齢)、発症後(38週齢)、野生型マウスを用いた。灌流固定を行い脳幹を採取し、クライオスタットにて凍結切片を作成した。 Nissl染色とChAT抗体(choline acetyltransferase)による免疫組織化学法を行い、延髄の舌下神経核と迷走神経背側核のニューロンの経時的変化について検討した。 発症後のマウスでは舌下神経核のニューロンで、ChATの染色性の低下を認めた。一方迷走神経背側核のニューロンでは野生型、発症前、発症後のいずれにおいても、ChATの染色性の低下は認めなかった。また発症前にはみられなかった空胞変性が、発症後には延髄舌下神経核周辺に認めるようになった。 ALSモデルマウスの延髄において、腹側にある舌下神経核のニューロンでは神経細胞死をきたすが、背側にある迷走神経背側核のニューロンは細胞死を免れることが明らかになった。
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