研究課題/領域番号 |
23791924
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西村 忠己 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60364072)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 軟骨伝導 / 補聴 / 補聴器 / 伝音難聴 / 耳軟骨 |
研究概要 |
軟骨伝導補聴器の試作器を難聴者に適合し、その効果を評価した。その結果難聴の種類によって音の伝導効果、語音明瞭度に与える影響がことなることが分かった。各難聴者の難聴の原因に応じた調整が必要であることが分かった。軟骨伝導の解明についての聴覚実験では、振動子の呈示位置、固定方法の違いによる閾値への影響を測定した。その結果軟骨を振動させることが重要であり、固定圧については影響が少ないことがわかった。耳栓をすることでの閾値への影響を気導、骨導と比較すると、低い周波数では骨導と、高い周波数では気導と近いことがわかった。周波数により伝導の特徴が異なり、気導、骨導とはことなる伝導経路で伝わっていることも分かった。軟骨伝導で語音を呈示したときの語音明瞭度を測定すると、気導、骨導とは差を認めなかった。このことから補聴器からの音の呈示手段として軟骨伝導が有効なことが分かった。耳栓をした状態でも比較したが、高い周波数の伝導効率が悪くなり、低音強調となるため、語音弁別能が低下することが分かった。耳栓をした状態は外耳道閉鎖症の症例の状態と近いと考えられるため、このような症例に補聴器を適合する場合は、周波数特性に注意が必要であることがわかった。軟骨伝導のラウドネスについての検討では、骨導と比較して、呈示音圧の変化に伴うラウドネスの変化に差がないことがわかった。今回測定した音圧の範囲では、軟骨伝導に与えた音圧が骨導でどの程度になるか換算することが可能となり補聴器の調整に役立つことが期待される。以上今年度の研究成果は、伝導経路の解明および軟骨伝導を用いた補聴器の開発に大いに役立つと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標として試作補聴器を実際の難聴者に対して行うこと、軟骨伝導解明のための聴取実験を行うこと、軟骨伝導で呈示した場合の語音聴取能について評価することなどを挙げていた。実際の研究の進捗の程度については以下のようである。 試作補聴器の評価については数名の難聴者に対して実施し評価することができた。軟骨伝導の解明のための聴取実験、語音聴力検査についても実施し、軟骨伝導の伝導メカニズムおよび軟骨伝導で与えた語音聴取能について検討することができた。また軟骨伝導のラウドネスについても骨導と比較することで評価できた。 このことから昨年度の研究目標についてはおおむね実施することが可能であり、当初の予定通りに進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年得られた結果を基に、新しい振動子および補聴器の作製を行っており、それらの開発を進めていく。試作した振動子および補聴器は物理特性の測定、聴力正常者を用いた聴取実験を行い評価する。その結果十分な効果が得られると考えれる試作振動子、補聴器を作成する。そして完成した補聴器は再度難聴者で評価を行う予定である。また軟骨伝導の伝導メカニズムの解明のための聴覚実験を進めていく。伝導メカニズムの解明には、聴取実験、ラウドネスの比較、語音明瞭度の評価を行う。気導、骨導での結果と比較することで、軟骨伝導の伝導メカニズムの解明、特徴を明らかにしていく。その比較には、振動子の固定部位を変化させたときや耳栓を装着した時にどのような変化が生じるかなどを指標に行っていく。得られた結果を解析することで、軟骨の振動の役割、周波数ごとの伝導経路の違いを評価する。軟骨伝導の伝導経路を明らかにすることは、より効果のある振動子の製作、補聴器の音質調整、出力の設定などにも役立つと考えられるため、この結果を補聴器の開発にも役立てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に新しい振動子および補聴器の開発を行うために使用する。また成果を国内外の学会で発表を予定しており、また英文誌への投稿を予定している。開発した補聴器は難聴者を対象に試聴していただくことも考えており、その場合の謝金に支出する。伝導経路の解明のための聴覚実験については、実験に必要な機材以外に被験者に対する謝金などへの支出を予定している。また動物実験を行う際には、その購入費にも充てる予定である。
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