前年度までの結果から軟骨伝導補聴器は高音域の利得が不足する傾向が明らかとなっている。この問題を解決するため、補聴器の特性調整ソフトのプログラムを変更することで信号処理により高音域の出力を上げ、さらに振動子自体の改良を行い共振周波数がより高い周波数となるように調整した。さらに補聴器の出力以外にも実際に外耳道閉鎖症の方で試聴していただくと、ハウリングの問題も明らかとなった。ハウリングについては通常の気導補聴器とは異なる音が入力されたときに一瞬だけ生じる現象が確認された。このため通常の補聴器で用いるハウリング抑制方法だけでなく軟骨伝導補聴器用の何らかの抑制方法が必要になってくることがわかった。この問題については現時点では出力を抑制するなどの方法を行うことで対応しているが今後さらに出力アップが必要な症例に対応するためにも改良していくことが必要である。 補聴器の効果としてはこれまでの検討で軟組織による閉鎖症では効果が高く、骨性閉鎖では効果が低いと考えられた。しかし調整ソフト、信号処理、振動子の改良を行うことで高音域の出力の増大を行いその結果昨年度よりも装用閾値の改善が得られ、骨導補聴器と同程度の利得が得られるようになった。装用方法については、耳型を採取し外耳道口に固定する方法が、圧痛などの骨導でみられる欠点もなく、安定性、音の伝導性に優れており、審美性も通常の耳かけ型の補聴器とほぼ同じであり優れていると考えられた。語音明瞭度検査では昨年度の試作補聴器よりも改善し、骨導補聴器、埋め込み型骨導補聴器を使用している例ではそれらの補聴器での結果とほぼ同程度の語音聴取能が得られることが分かった。外観上、補聴効果については十分製品化することが可能なレベルまで改良できたと考えられた。今後は耐久性の向上を図り、さらなる改良を行っていくことで可能な限り早急に実用化を目指したいと考えている。
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