近年頭頸部癌、特に進行癌に対して化学放射線療法が初回治療として選択されるケースが増加してきた。化学療法のレジメの選択などによりその治療効果は高く、進行癌であっても根治可能な症例が増えてきている。しかしながら、同治療を用いても根治できない症例も少なからず存在し、また根治し得たとしても治療による粘膜炎などの障害により高度のQOL低下をきたす症例も多い。それぞれの頭頸部扁平上皮癌症例に対する放射線の感受性予測、さらなる有害作用を最小限にとどめつつ、より治療効果の高い放射線治療の開発を目的とし研究を行ってきた。がん遺伝子の一つであるcSrcにターゲットを絞り研究を行ってきた。cSrcは放射線感受性との関連が培養癌細胞では認められるという予備的知見を得ており、これらの結果が実際の臨床でも応用できるのかを検討した。臨床検体に対して免疫染色を行った検討ではcSrcが高発現している症例ではしていない症例と比較し放射線抵抗性であることが判明している。また頭頸部癌で放射線治療との併用で汎用されているシスプラチンとの併用効果を培養癌細胞で検討した。その結果ではシスプラチンと放射線との併用に比較しシスプラチン、放射線とcSrc inhibitorとの3者併用では抗腫瘍効果が高いことが判明している。さらにcSrcだけでなくIGF-1RとEGFRに関してもその相互作用と放射線治療の関係をin vivoモデルを用いて検討した。その結果では過去の報告と同様に抗EGFR抗体と放射線の併用では高い抗腫瘍効果示し、放射線単独と比較してその効果を増強している。抗EGFR抗体にさらにIGF-1R抗体を加えると放射線感受性はより高まり、高い抗腫瘍効果を発揮することが判明した。
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