研究課題
平成25年度はこれまで平成23年度~24年度に行った試験的な検討結果や臨床的な有用性を考慮して頭頸部癌のうち上咽頭癌に検討対象を絞り、CD44variant isoformの発現と臨床データとの比較についての統計学的な検討を重ね、国際学会における発表、英文論文の作成を行った。検討の対象は一次治療前の生検標本を検討することができた上咽頭癌42例とした。これらの上咽頭癌症例に対してはすべて一次根治治療として放射線化学療法が行われていた。生検標本に抗CD44抗体を用いた免疫染色を行い、どのCD44variant isoformの発現が①予後規定因子となるか②上咽頭癌の治療において重要なポイントとなる原発巣の放射線化学療法への抵抗性に関与する因子となるかを検討した。疾患特異的生存率に関してLog-lank試験ではCD44v3とCD44v6の高発現群が低発現群に比べて有意に予後不良であった。患者背景などを加えた多変量解析を行うとCD44v3の高発現のみが疾患特異的生存率の低下に有意に関与するという結果であった。一方で、原発巣の放射線化学療法への抵抗性に関する多変量解析の結果はCD44v6の高発現のみが関与していた。上咽頭癌は放射線化学療法に対する感受性が比較的高い悪性腫瘍ではあるが、原発巣が残存した場合には解剖学的な部位もあり救済治療が困難である。また、上咽頭癌の放射線化学療法後の唾液腺障害による口腔乾燥などの合併症は患者の生活の質を大きく低下させるものである。上咽頭癌の予後予測因子、原発巣の放射線化学療法に対する治療抵抗性を治療前から推測できれば個々の腫瘍による治療強度の決定が可能となる可能性もあり、臨床的に有意義であると考えられる。また上咽頭癌におけるCD44 variant isoformの役割を検討することは分子レベルの治療に発展する可能性もある。
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