研究課題/領域番号 |
23791953
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
木村 百合香 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40450564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 老人性難聴 / 蝸牛外側壁 / レーザーマイクロダイゼクション / cochlin / 免疫染色 / ヒト側頭骨病理 |
研究概要 |
老人性難聴の病理組織学的解析は、Schuknechtらにより感覚細胞性、蝸牛神経性、血管条性、基底板振動障害性の4つのタイプの形態学的解析分類がなされたが、約1/4の症例で原因を説明しうる光学顕微鏡的病理組織所見を持たないとされている。そこで本年度は、ヒト側頭骨病理組織で蝸牛外側壁に多く発現するcochlinの加齢との相関につき免疫組織学的解析を行った。(方法)対象は東京都健康長寿医療センター病理診断科にて剖検を施行した10症例でその内訳は、前期高齢者5耳:69.4±3.6歳(63~72歳)、超高齢者5耳:92.2±2.9歳(90~97歳)であり、看護記録上前者は難聴はなく、後者は全症例難聴があった。ホルマリン固定パラフィン包埋側頭骨切片を作成し、標識ポリマー法によりcochlinの免疫染色を施行した。画像解析ソフトImageJを用いラセン靭帯内の基底稜におけるcochlinの陽性面積を測定した。(結果)免疫染色の結果、cochlinはラセン靱帯,基底板,ラセン板縁にcochlinの発現があり、感覚細胞,ラセン神経節には発現はなく、頂回転方向へ行くほど染色性は薄く限局されていた。超高齢者群では、基底稜を中心とした間質にcochlinが広くベッタリと発現する傾向であった。cochlinの免疫染色陽性率は前期高齢者VS超高齢者=46.8%:53.9%であり、免疫染色での定量的評価は困難だが、加齢によるラセン靱帯におけるcochlin分布の変化の可能性が示唆された。基底板振動障害型老人性難聴ではラセン靱帯内II型コラーゲンの陽性面積が増加し、また、CochlinとII型コラーゲンの局在は一致していることから、光顕的形態変化のない老人性難聴ではCochlinの加齢による分布の変化がII型コラーゲン配列の乱れや基底板振動の乱れを生じるなど、感音難聴を引き起こしている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ヒト側頭骨病理標本を用いて前期高齢者・超高齢者間でのcochlinをコードするCOCHmRNAの蝸牛外側壁における定量解析を行う予定であったが、ホルマリン固定パラフィン包埋切片におけるmRNAの保存が悪く、定量解析方法の確立を行っている状況である、次年度以降も引き続き定量解析方法の確立を模索する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、レーザーマイクロダイゼクション法とTaqManPCR法を用いた蝸牛外側壁におけるCOCHmRNAの定量解析方法の確立を検討する。その後、 cochlinには4つのisoformがあるが、ラットの内耳では成獣でp63の増加が認められることから、ヒトにおいて加齢とともに変化するCOCH mRNAに関し、どのisoformに発現の変動があるかを検討を行う。 また、近年miRNAによる遺伝子発現の制御がトピックとなっており、難聴においてもその関与が報告され始めている。そこで、mRNA解析とあわせてヒト蝸牛外側におけるmiRNAの動態の解析方法に関しても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザーマイクロダイゼクション法とTaqManPCR法を用いた蝸牛外側壁におけるCOCHmRNAの定量解析方法の確立を目的とし、これらの試薬の購入と、あわせてmiRNA解析法の検討に用いる試薬を購入する。 また、これまでの研究成果の発表と情報収集のための学会参加・論文作成にかかる英文校正、図書購入に研究費を充てる。
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