研究課題/領域番号 |
23791960
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅野 江里子 東北大学, 国際高等研究教育機構, 助教 (70375210)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 視細胞 / 網膜色素変性症 / アデノ随伴ウイルス / 遺伝子治療 |
研究概要 |
網膜色素変性症に起因する遺伝子は、40以上も報告されている。本研究では、網膜色素変性症の遺伝子変異に関わらず、遺伝子異常を修正する「Replacement Therapy」について、検討を行う事を目的とする。 本年度は、視細胞に選択的に遺伝子導入を行う為のベクターの作製をおこなった。当初、ロドプシンプロモーターを使用する予定であったが、プロモーター活性が極めて低かった。これに対し、Interphotoreceptor Retinoid-Binding Protein(IRBP)プロモーターとphosphodiesterase(PDE)プロモーターの組み合わせを用いる事で、網膜視細胞に特異的に遺伝子導入を行える事が分かった。 実験では、IRBP-PDEをプロモーターとしたアデノ随伴ウイルス(AAV-Type5)を作製し、網膜下から投与した。この結果、視細胞特異的に遺伝子発現を起せたが、網膜の一部にのみにしか発現が見られなかった。そこで、投与ニードルを研究室で新たに作製し、硝子体側からの網膜下投与を試みた。このニードルを用いれば、網膜下投与を行った場合より広範囲に遺伝子導入がされた。しかし、我々が遺伝子導入を行う予定である生後20日前後のラットに用いるには、規格的に無理である事が分かった。そこで、細胞膜への親和性を上げる為、ウイルス構成タンパクの内、膜輸送シグナルの遺伝子の改変を行った。この結果、細胞への透過性を亢進できると予想される。このウイルスを用いて硝子体側から投与して、広範囲に視細胞に導入したいと考えている。本年度は、改変までを終える事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、視細胞に特異的に遺伝子導入を行う為のベクターを構築し、確認ができた(ウイルス作製時、感染価の確認をTali TM・イメージベース、サイトメーターにて確認)。 また、実験の結果、一部の視細胞にしか導入されないという問題点が明らかとなった。そこで、広範囲に遺伝子を導入できるウイルスを構築、作製することができた。現在、このウイルスの遺伝子導入範囲を確認中である。 本年度は、東日本大震災により研究にやや遅れが生じた。震災では、多くの機器が被害を受けた。また、震災後の停電により、サンプル等の損失や、ウイルス産生細胞株等、様々な細胞株も失った。研究室を復元し研究をスタートさせる為に時間を要したが、本年度中途である実験は、次年度の研究と共に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度投与済みの広範囲に広がる改変型アデノ随伴ウイルスについて、遺伝子導入範囲の確認を行う。また、視細胞変性の促進を抑制させる遺伝子をIRBP-PDE プロモーター下に組み込み、その変性の遅延もしくは、阻止について組織標本を作製し調べる(ドラフトチャンバー使用予定)。 さらに、変異の多様性に関わらずロドプシン(RHO) 変異を抑制する配列を選択し、この遺伝子をRNAi活性の高いShRNAに組み込んだベクター(a)の作製を行う。このベクターを用いて、生来のラットロドプシン遺伝子を安定的に発現するHela細胞株(b)に遺伝子導入を行い、細胞の形態観察を行う。(b) はロドプシンを発現している為に突起を伸展させ、神経細胞様を呈する。この神経突起をよく抑制する(a)を数個作製した中から選ぶ。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度、予定より遅延した部分について、次年度の研究と共に進める予定であり、予算の多くは、動物購入及び飼育費と網膜組織の評価実験に使用する予定である(ドラフトチャンバー購入予定)。
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