研究課題/領域番号 |
23791961
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
砂金 ひとみ 東北大学, 国際高等研究教育機構, 技術補佐員 (30400451)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 眼生理学 / 視覚再生 / 神経科学 |
研究概要 |
チャネルロドプシン-2タンパク質の発現による網膜神経節細胞の保護効果について遺伝的視細胞変性ラット(RCSラット)を用い、検討を行った。 RCSラットの硝子体内にチャネルロドプシン-2遺伝子をコードしたアデノ随伴ウイルスを投与した。遺伝子導入後のRCSラットは、視覚誘発電位の回復を示し、神経節細胞の機能が保持されていることが確認できた。神経節細胞数がチャネルロドプシン投与群では、コントロール群に比べ多く残存している事より、更に凍結切片を作製し免疫組織化学的に検討した結果、神経節細胞の生存維持に対して重要な役割をもつp65の発現が神経節細胞層に強く見られた。その一方でチャネルロドプシンを導入していないラットでは、GFAPおよび、GSの反応が網膜全層に見られた。GFAPは網膜のアストロサイトやミューラー細胞のストレス状態の指標とされ、RCSラットの視細胞変性過程において発現が亢進することが報告されている。よって、神経節細胞の生存維持が網膜内層の他の神経細胞へのストレスを緩和している可能性が示唆された。また、ウエスタンブロッティングにより検討した結果でも、免疫染色の結果と同様、GFAPタンパク発現量がチャネルロドプシン2を遺伝子導入したラット群では、コントロール群に比較し少ない事が分かった。 これらの結果から、チャネルロドプシン-2の発現により網膜全層に渡り保護効果に関与する因子が発現する事が示唆された。この保護因子の誘導は、神経節細胞保護に伴う視細胞の二次変性抑制にも効果的であると考えられ、神経節細胞保護機能と生存維持の効果を高めることが出来ると考える。今後は、遺伝子導入ラットの網膜を採取し、二次元電気泳動とウェスタンブロッティングによりチャネルロドプシンの発現によって増加または減少した特異的なタンパク質の検出を行い、網膜における神経細胞の変性に関するメカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年3月11日に発生した東日本大震災、および4月7日に発生した地震により、実験棟への立ち入りを制限された。また、制限解除後も実験機器の8割が破損、損失し、培養細胞及び飼育実験動物等の試料も死滅した。その為、実験機器修理、新しい試料の入手、遺伝子導入動物の作製等、実験環境の整備に期間を要し、本課題の今年度の研究計画を達成することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
震災の影響による損傷した機器の修理や、損失したサンプルの入手に時間がかかったことから研究計画の遂行に遅れが生じている為、平成23年度に計画していた遺伝子導入ラットの網膜からの神経細胞保護効果に対する特異的タンパク質の検出、およびメカニズムの解明を行う。また、それらの結果より、細胞死抑制効果のある因子を見出し、培養細胞へエレクトロポレーション法で導入し、安定的に継続して因子を発現する細胞株を作製する。この細胞株に酸化ストレス、あるいは神経細胞生存を阻害する要因等を与え、細胞生存保護効果について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画を遂行する為に、次年度ではラット飼育の環境を整備し、より多くの遺伝子導入ラットの作製、試料の採取を行う事とする。その為、RCSラット及びラット飼育用ケージラック、試料の購入を予定している。 また、ウイルス精製の為のプラスミド抽出試薬、細胞培養用品の購入とタンパク質解析試薬等の消耗品の購入を行う。それらの研究結果を報告する為、学会発表(成果発表旅費使用予定)と論文投稿(論文投稿料使用予定)を行う予定である。
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