研究課題
平成23年度には、遺伝的視細胞変性ラット(RCSラット)の網膜へアデノアソシエイトウイルスベクターを用いて、ChR2遺伝子を導入した。遺伝子導入を行ったRCSラットは視覚誘発電位の回復を示した。また、免疫組織学的評価により神経節細胞の生存維持に対して重要な役割をもつp65の発現が神経節細胞層に強く見られたことから、神経節細胞保護に伴う視細胞の二次変性抑制にも効果的であり、神経節細胞保護機能と生存維持の効果を高めることが出来ると考えた。今年度は、神経細胞保護効果に対する特異的タンパク質の検出、およびメカニズムの解明を行う為、遺伝子を導入した遺伝盲ラットの網膜を採取し、マイクロアレイによる解析を行った。ChR2とVenusの融合遺伝子とVenus遺伝子を導入した網膜を比較した結果、発現遺伝子パターンは類似していたが、ChR2V遺伝子導入群のみで増加した遺伝子は437個、減少した遺伝子は755個であった。また、増減した遺伝子の特徴はVenus遺伝子を導入した網膜では、免疫に関与する遺伝子の発現増加が認められたのに対し、ChR2とVenusの融合遺伝子を導入した網膜では、これらの発現増加は認められなかった。ChR2V遺伝子導入群では、イオンチャネルに関連する遺伝子群、シグナル伝達に関与する遺伝子群の発現が有意に減少していた。これらの結果をまとめると我々がすでに報告している、「ChR2遺伝子導入によって免疫学的な副作用は見られない(Sugano E., et al, Gene Therapy)」という結果が、マイクロアレイの解析によっても得られた。また、ChR2が網膜内で光活性化イオンチャネルとして機能することによって、イオンチャネルおよびシグナル伝達に関係する遺伝子の発現が減少したものと考えられた。
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