研究課題/領域番号 |
23791962
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大家 義則 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20599881)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 |
研究概要 |
原田病と診断されている9例16眼を対象として、点眼麻酔ののち、生体共焦点顕微鏡(Heidelberg Retina Tomograph II Rostock Corneal Module)をもちいて角膜輪部を観察し、pallisade of Vogt部における角膜輪部基底細胞の長経および面積を計測した。平均年齢は51±12歳、男性13眼、女性3眼であった。原田病における角膜輪部基底細胞の長径および面積はおのおの16.1±1.1umおよび135±15um2であった。正常の角膜輪部基底細胞の大きさはZheng T らの報告においては40~59歳では10.70umであり、Kobayashi Aらの報告においては10.6umである。これら正常眼における報告と比べて、原田病患者においては角膜輪部基底細胞が大きい傾向が認められた。以上の結果より、原田病においては角膜輪部のメラノサイトが破壊され、それによって角膜上皮幹細胞ニッチが変化して、角膜輪部基底細胞が正常より大きくなっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成23年度においては、原田病患者において角膜輪部の共焦点顕微鏡観察を行い、その細胞形態について解析を行った。その結果、正常眼に比較して原田病患者においては、角膜輪部基底細胞が大きくなっている可能性が示唆されている。この結果は角膜輪部における角膜上皮幹細胞ニッチにメラノサイトが影響を与えることを示唆する内容である。以上の成果より、研究の目的に記載した内容について、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
原田病患者に加えて、正常眼において角膜上皮幹細胞が存在する角膜輪部の細胞形態を観察する。また色素細胞の密度、色素細胞と角膜上皮幹細胞との位置関係についての解析を行う。さらに角膜上皮幹細胞疲弊症における角膜輪部の解析を行う。具体的には慢性期の角膜上皮幹細胞疲弊症においては、角膜輪部上皮の雛壁構造が崩れることが知られているが(Shortt AJ 2007 Stem Cells)、慢性期角膜上皮幹細胞疲弊症患者においても正常角膜輪部と比較して角膜上皮幹細胞(直径、面積、密度)、色素細胞(密度)、免疫細胞(密度)の変化を形態変化について検討をおこなう。また可能であれば角膜上皮幹細胞疲弊症へと進行する急性期(アルカリ腐蝕やStevens-Johnson症候群)における解析を行う。すなわち急性期においては、角膜上皮幹細胞およびその幹細胞ニッチが急激に破壊されていると考えられ、角膜上皮幹細胞疲弊症患者における角膜上皮幹細胞(直径、面積、密度)、色素細胞(密度)、免疫細胞(種類、密度)の変化を共焦点顕微鏡にて細胞レベルで観察することで、幹細胞ニッチ破壊の機序を解明する。これらの検討を通じて角膜輪部の構造と幹細胞機能維持について検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究推進に必要な共焦点顕微鏡関連消耗品(共焦点顕微鏡用のトモキャップや眼との接触部位に用いる眼表面保護材など)の購入に充てる。さらに研究推進のために学会参加によって角膜上皮幹細胞および再生医療についての情報収集に努める。
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