研究課題
糖尿病網膜症や未熟児網膜症といった虚血性網膜症は病的網膜血管の発生を伴う、高頻度に失明や視覚障害をきたす重篤な疾患である。本病態において、網膜の血管新生阻害療法、炎症抑制療法は視力低下の予防に有効であると考えられている。アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される血中蛋白で、その血中濃度は2型糖尿病で著明に低下している。アディポネクチンは糖尿病の発症進展に対して、防御的に作用するのみならず、糖尿病合併症である大血管障害、特に動脈硬化、虚血性心疾患に対しても防御作用を有する分子である。本研究の目的は、アディポネクチンの虚血性網膜症の制御機構とその機序を解明することである。本年度は、アディポネクチン過剰発現マウスを用いて虚血性網膜症の動物モデルである酸素誘発性網膜症マウスを作製した。アディポネクチン過剰発現マウスと野生型マウスを生後7日から12日まで高酸素濃度(75%)で飼育する。生後12日より17日まで大気下での飼育に戻すことにより虚血性網膜症の状態を誘導した。生後17日に網膜を単離し、レクチン染色にて網膜新生血管を評価すると、アディポネクチン過剰発現マウスでは、野生型に比し、有意に病的血管新生が減少していた。さらに、炎症性変化の評価として、ConA染色法にて白血球の網膜血管への接着を検討したところ、アディポネクチン過剰発現マウスにおいて、接着白血球の数は有意に減少していた。従って、アディポネクチン過剰発現マウスでは、酸素誘発性の網膜血管障害が軽減していた。今後さらに、網膜におけるアディポネクチンシグナルの解明、アディポネクチンを増加させる薬剤の虚血性網膜症に対する作用を酸素誘発性網膜症マウスを用いて検討予定である。
2: おおむね順調に進展している
アディポネクチン過剰発現マウスと、虚血性網膜症の動物モデルである酸素誘発性網膜症マウスを順調に作製することができた。
1.網膜におけるアディポネクチンシグナルの解明:アディポネクチン過剰発現マウスを用いて、酸素誘発性網膜症マウスを作成し、網膜におけるシグナル伝達物質(AMPK,Akt,eNOS,など)をウエスタンブロット法で、炎症性サイトカイン( TNFα, IL-1,IL-6など)を定量的PCR法で検討する。2.アディポネクチンを増加させる薬剤の虚血性網膜症に対する作用:アディポネクチンを増加させる薬剤(PPARγアゴニスト、PPARαアゴニストなどを野生型マウスに投与し酸素誘発性網膜症マウス作製して網膜症に対する作用を検討予定である。
動物費、動物飼料 試薬、モノクローナル抗体 免疫組織化学用試薬に使用する予定である。
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