研究課題/領域番号 |
23791980
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇治 彰人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60534302)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 補償光学 / 糖尿病網膜症 / 網膜循環 / 虚血性黄斑賞 |
研究概要 |
補償光学(adaptive optics: AO)を適用した走査型レーザー検眼鏡(AO-SLO)は、眼球光学系全体の収差を補正し眼底を細胞レベルで観察することが可能である。近年、AO-SLOを用いて傍中心窩網膜毛細血管内を流れる高輝度粒子を観察し、白血球と推察する報告がなされているが、その特定には至っていない。AO-SLOを人眼において非侵襲的に網膜微小循環を評価できる機器に完成させるためには高輝度粒子の正確な解釈が必須である。我々はその正体に迫るべく、血管の影の中を黒い尾を引きながら流れる高輝度粒子の定量的画像解析を行った。結果、AO-SLOで観察される高輝度粒子の正体は、視細胞層に映った暗い血管の影の中で順番に明るくなる視細胞群であると考えられた。このような現象の原因となるのは、その光学的特性を考えると毛細血管中を流れる白血球あるいは血漿(plasma gap)であると考えられる。つまり、透明に近い白血球あるいは血漿はレーザー光を透過し、視細胞で反射、われわれの目に戻ってきて観察される。一方、赤血球はレーザー光をブロックし、レーザー光が視細胞層に到達するのを妨げるのである。この現象はBlue field entoptic phenomenonの原理と非常によく似ている。我々はこの発見を世界に向けて発信し、AO-SLOを用いた網膜血流の正確な解釈に新しい光明を投じた。また今回の観察でもう一つ発見をした。いわゆる"dark tail"である。おそらく赤血球列(rouleaux formation)による強いブロックと考えられ、今後その臨床的意義が注目される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者及び患者より問題なくAO-SLOデータは収集できている。FAZ および周囲の毛細血管ネットワークの形態変化と視機能の相関に関しても検討中であるが、新しいパラメーターの解析も同時に行っていることを考えれば、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1)虚血性黄斑症患者におけるAO-SLO データの収集と解析を引き続き行う予定である。2)糖尿病患者におけるAO-SLO データの収集と解析を予定している。以上2項目については当初予定していなかった、新しいパラメーターである赤血球列の評価も行う。3)AO-SLO で得られたデータと蛍光眼底造影写真の比較検討を行う。4)全身的なパラメータとの相関に関する検討を予定している。4)NADPH オキシダーゼ阻害剤の網膜虚血に対する影響を動物実験にて検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物や実験試薬、器具の購入に充てる予定である。またAO-SLO画像は容量が大変大きく、その解析にはかなりの記憶媒体を必要とすることがわかってきている。そのため、大型の記憶媒体複数個の購入には高額の研究費が必要であると考えている。その他、海外学会での研究成果の発表や、科学誌への成果投稿に研究費を使用する予定である。
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