研究概要 |
斜視患者の眼位・眼球運動を測定できる3次元(水平、垂直、回旋成分)のビデオ画像解析システムの開発を行っている。頸眼反射の影響を最小限にするために可能な限りの装置の軽量化が重要である。軽量(47g)で瞳孔間距離を任意に調節可能な万能検眼鏡(ハセガワ・ビコー, JAPAN)に軽量(109g)で秒間60フレームでカラーの高画質(FX 1,920×1,080ピクセル, 60i)録画可能なデジタルスチルカメラDSC-TX55(SONY, JAPAN)を片眼づつにそれぞれ2台搭載し、暗室下で高解像度プロジェクターVPL-VW90ES(SONY, JAPAN)によって映しだされた光源目標を被験者の眼がハーフミラーを通して固視可能な眼位・眼球運動測定装置の開発を行っている。 装置の開発と並行して解析用ソフトウェアであるMATLAB(Mathworks, U.S.A.)を用いて、撮像した動画から1枚の画像(1フレーム)を抽出し、一連の画像を連続して解析することで眼球運動を測定できるプログラムの開発を行った。精度の高い測定にするため1ピクセルの濃淡から位置を判定するプログラムを組み込んだ。 開発した画像解析プログラムから得られるデータの有用性を過去の測定と比較し評価した。上斜筋ミオキミア患者の回旋運動成分の平均1°未満の微細な眼球運動をCCDカメラ(720×480、30fps)によって撮影し解析を行った。この結果は過去の精度の高いサーチコイルを用いた測定結果と同様であった。第116回日本眼科学会総会(2012年4月 東京)にて演題「上斜筋ミオキミアにおける眼球運動の3次元画像解析の評価」の発表しこの結果を報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度は3次元のビデオ画像解析システムの開発を行い、正常者を対象に計測システムの精度を明らかにし、臨床に応用できる状態にすることであった。画像解析のためMATLABプログラムが順調に開発できたことと裏腹に測定装置の開発が遅れている。理由は軽量化のためである。頸眼反射の影響を最小限にするために軽量化は重要である。検査用眼鏡に2台のデジタルスチルカメラを搭載するには、軽量でなおかつ丈夫な素材が必要であった。当初はタミヤ・エポキシ造形パテ(TAMIYA,JAPAN)を用いて作成したが、造形において扱いが難しく骨格に金属を用いたが重量増加の問題があり装置の作成に困難が生じたため開発が一時停止した。このことで改善案を検討したところ軽量かつ造形が容易で丈夫な素材であるnanoblock(KAWADA CO.,LTD., JAPAN)を用いたところデジタルスチルカメラ(109g)を安定して十分に支えることが可能であったため、これを用いて装置を作成している。これにハーフミラーを装着することで測定装置が完成する予定である。
|