研究課題
圧感受性と細胞骨格の関与を調べるため、われわれは緑内障患者眼の房水と線維柱帯で増加している酸化ストレスと細胞死に着目し、ROCK阻害薬が線維柱帯細胞において酸化ストレスに与える影響について検討した。前年度までの研究によって、カニクイザル培養線維柱帯細胞をROCK阻害薬(Y-27632、25μM)で30分処理したあとmRNAを回収し、マイクロアレイを用いて12613遺伝子を網羅的に解析したところ、抗酸化機能関連の5つの遺伝子の発現が上昇しており、さらにY-27632による前処理によってカニクイザル線維柱帯細胞の酸化ストレスによる細胞死が減少することがWST-8 assayによって示唆されていた。この現象をさらに確かめるために、われわれは抗活性化caspase-3抗体を用いて免疫染色を行った。800μMの過酸化水素水処理によって活性化caspase-3陽性細胞は著明に増加したが、その影響は25μMのy-27632による前処理によって抑制されることが分かった。さらに同濃度のY-27632による刺激によって、抗酸化タンパクであるcatalase遺伝子の発現が上昇することがRT-PCRによって確かめられた。また蛍光プローブを用いて活性酸素の発現を調べたところ、過酸化水素水によって誘導される活性酸素はY-27632で抑制されていた。一方で過酸化水素水による酸化ストレスによって線維柱帯細胞のアクチン細胞骨格が脱重合化されることも免疫染色によって確認された。これらの結果から、ROCK阻害薬は細胞内における抗酸化作用物質の発現を誘導し、酸化ストレスによる細胞死を抑制することが示された。そのメカニズムにおいてはアクチン細胞骨格の変化が関与する可能性が示唆された。
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