研究概要 |
加齢黄斑変性は脈絡膜新生血管を本態とする、我が国において失明原因の上位を占める疾患である。近年分子生物学的なアプローチによって新たな治療法の糸口が模索されており、その発症予防、早期治療が急務となっている。 申請者らは、脂肪細胞から分泌されるアディポカインの一つである、アンギオポイエチン様タンパク2(Angiopoietin-like protein 2:Angptl2)に着目し、解析を進めた。Angptl2はアンギオポイエチンと類似した構造を持つものの、アンギオポイエチンとは異なり、Tie1,2とは結合しないことが特徴のタンパク質であり、これまでに7種類が発見されている(Angptl1-7)。中でもAngptl2は慢性炎症やマクロファージ遊走能をもつことが報告されており、AMD病態形成とも関連している可能性が考えられるが、これまでにAngptl2とAMDとの関連を示す報告がないことから、本検討を試みた。 正常網膜においては、Angptl2は網膜色素上皮に局在を認め、タンパク・mRNAともに神経網膜に比べて高い発現を認めた。また、マウスレーザーCNVモデルでは、病変部および周辺にAngptl2の局在を認めており、CNV形成およびマクロファージ遊走に関与している可能性が示唆された。培養細胞を用いた検討では、網膜色素上皮およびマクロファージにAngptl2の発現を認めており、炎症性サイトカインであるTNF-αやTGF-βによって発現が変動することが明らかとなった(投稿準備中)。 また、申請者らは、ノックアウトマウスやAngptl2添加実験を行い、Angptl2を介した炎症シグナルとAMD病態における関与を解析しており、発表準備中である。
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