研究課題/領域番号 |
23792006
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
齋藤 雄太 昭和大学, 医学部, 助教 (70407477)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 未熟児網膜症 / 抗VEGF抗体 / VEGF / OIR |
研究概要 |
平成23年度は、抗VEGF抗体のOIRに対する効果を検討した。まず、抗ラットVEGF抗体の結膜下投与に対する適性濃度を決定した。すなわちP12のOIRラットに抗ラットVEGF抗体0.1μg/μLもしくは1.0μg/μLを1μLずつ右眼の結膜下へ投与した。またnormal Goat IgG 1.0μg/μLを1μLずつ右眼の結膜下へ投与した群と、非投与群をコントロールとした。左眼は非投与眼とした。その結果、P18において、抗ラットVEGF抗体は両眼(投与眼および非投与眼)に濃度依存的に網膜新生血管と無血管領域を抑制する傾向を示した。抗VEGF抗体の効果は投与眼(右眼)のみならず非投与眼(左眼)にも影響があることより、右眼に投与した抗VEGF抗体は全身循環を経て左眼にも作用したと考えられた。 次に抗VEGF抗体の結膜下と硝子体内投与とでの効果の違いを検討した。抗VEGF抗体の濃度は、結膜下投与でより効果のあった1.0μg/μLを選択した。コントロールとしてnormal goat IgG 1.0μg/μLを用いた。P12に薬剤を右眼に結膜下もしくは硝子体投与し、P18に網膜新生血管と無血管領域を評価した。網膜新生血管はnormal goat IgG結膜下投与群と比較して、抗VEGF抗体の硝子体投与群の投与眼で最も抑制され、抗VEGF抗体結膜下投与群の投与眼および非投与眼でも抑制されていた。各群間のP12およびP18で体重の違いは見られなかった。これにより抗VEGF抗体1.0μgの投与は体重増加に影響しないことがわかった。 さらに抗VEGF抗体の薬剤動態を知るため、P12の通常の新生仔ラットの右眼に抗VEGF抗体1.0μgを結膜下もしくは硝子体投与し投与直前、3, 24, 48, 144時間後の網膜内および血清中薬剤濃度の推移を測定したが、その精度に問題があり来年度の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の当初の予定ではOIRラットを作成し、抗ラットVEGF抗体を新生仔ラットの結膜下と硝子体内へ注射投与し網膜血管新生への効果を確認する計画であった。実際にOIRラットを作成し、抗ラットVEGF抗体1.0μg/1.0μLを結膜下および硝子体内へ投与し、網膜内新生血管のスコアリングと無血管領域の測定を行った。その結果抗ラットVEGF抗体1.0μg/1.0μLの結膜下投与および硝子体内投与はGoat IgG投与と比較して網膜血管新生を抑制する傾向があり、正常網膜血管発達には影響を与えないことが明らかになった。 また、当初は平成24年度に行う予定であった血清中、網膜中の抗ラットVEGF抗体濃度の推移も、大気中で飼育したコントロールの新生仔ラット(Room Air: RA)を用いて測定を行った。 よって、当初の計画通りおおむね順調に実験計画は進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度と同様に動物モデルを作成し、P12に抗ラットVEGF抗体の結膜下投与及び硝子体内投与を行い、投与前後の薬物動態や網膜内VEGF濃度、薬物による網膜への影響を検討する。 具体的には、OIRもしくはRAのP12(薬剤投与前)、P13、P14およびP18にラットを深麻酔し屠殺したあと両眼球を摘出する。右眼と左眼別々に新鮮網膜を得た後、網膜組織をホモジェネートし上清を採取する。また屠殺時にラットの左心室より血液を採取して遠心分離を行い、血清を得る。 抗ラットVEGF抗体はGoat由来のため、網膜内および血清中の抗体濃度測定にGoat IgG ELISA Quantitation Kit(コスモ・バイオ)を使用する。また網膜内および血清中VEGF濃度を測定するためRat VEGF Immunoassay Kit (R&D systems)を用いる。 更に投与薬物の網膜毒性を検討するため、OIRもしくはRAのP12に抗VEGF抗体を右眼結膜下もしくは硝子体内投与して、P18に両眼球を摘出し、網膜凍結切片標本を作成する。normal Goat IgGを投与する群と非投与群をコントロールとして、視神経断面を含む網膜切片を染色して神経節細胞数をカウントし、比較検討する。 ELISA法による抗体濃度測定の精度に再現性・信頼性が低い場合には、ウェスタンブロット法などの他の測定方法に変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験には妊娠ラットを購入し、新生仔ラットを飼育チャンバー内にて酸素負荷して飼育する。妊娠ラットの購入費に約60万円、機器の消耗品(酸素濃度測定モニター等)の購入費に約20万円を当てる予定である。 また、実験に用いる投与薬剤、麻酔薬、網膜新生血管の解析に用いる染色剤や抗体キット、スライドグラスなどの薬品類・消耗機材の購入費に約60万円、論文作成に必要なソフトウェア、論文の英文校閲費、投稿料で約20万円、成果発表のための旅費に約20万円を当てる予定である。
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