ラットOxygen-Induced Retinopathy (OIR)モデルを用いて、抗VEGF抗体の結膜下及び硝子体投与での網膜症への効果とその薬物動態・網膜毒性を検討した。 平成23年度:まず抗ラットVEGF抗体の結膜下投与に対する適性濃度を検討した。日齢12(P12)のOIRラットに抗VEGF抗体0.1または1.0μg/μLを1μL右眼の結膜下へ投与した。Goat IgG 1.0μg/μLの1μL投与群と非投与群をコントロールとした。左眼は非投与眼とした。P18で抗VEGF抗体は両眼に濃度依存的に網膜新生血管を抑制する傾向を示した。次に結膜下と硝子体投与の効果の違いを検討した。P12に抗VEGF抗体またはgoat IgG 1.0μg(以後同量を投与)を右眼の結膜下または硝子体へ投与した。P18の網膜新生血管は非投与群と比較して、抗VEGF抗体の硝子体投与群の投与眼で最も抑制され、抗VEGF抗体結膜下投与群の投与眼と非投与眼でも抑制された。 平成24年度:P12のOIRラットの右眼に抗VEGF抗体を結膜下または硝子体投与して、投与直前(P12)、P13、P14、P18の血清中の抗体濃度を測定して非投与群と比較した。またP12の通常飼育ラットの右眼に同様に投与して、P18の網膜切片から神経節細胞数、内顆粒層及び外顆粒層の厚みを測定して非投与群と比較した。その結果、血清中抗体濃度は非投与群と比べて有意差はないものの結膜下と硝子体投与群のP13、14で高い傾向にあった。抗VEGF抗体、Goat IgG、非投与群の両眼において神経節細胞数、内顆粒層厚、外顆粒層厚に有意差はなかった。 以上より、抗VEGF抗体の結膜下投与はOIRの網膜血管新生の抑制に効果を示し、薬剤が全身循環を経て片眼へも作用したと考えられる。結膜下投与法はより簡便で安全な投与方法となり得る可能性が示唆された。
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