研究課題/領域番号 |
23792007
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
臼井 嘉彦 東京医科大学, 医学部, 助教 (50408142)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 難治性ぶどう膜網膜炎 / 眼内炎症 / 液性因子 / サイトカイン / CD4 T細胞 / 補助シグナル |
研究概要 |
ベーチェット病、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病およびぶどう膜炎を有していない健常人の発症期、活動期、寛解期のCD4 T細胞における補助シグナル分子の発現を比較検討したところ、CD4T細胞上のICOS、OX40、4-1BBが有意に健常人と比較して上昇していた。また、同様にと抗原提示細胞(主にCD14陽性細胞)におけるリガンドの発現を比較したところ、PD-L、ICOSL、OX40L、CD40の発現が有意に健常人と比較して高かった。また、ベーチェット病患者については抗TNF-α抗体(レミケード)投与前後、サルコイドーシスおよびVogt-小柳-原田病について副腎皮質ステロイド薬の全身投与前後における補助シグナル分子の発現を比較検討したところ、治療により発現は低下していた。同様の検討をTLR2およびTLR4についても検討を行ったが、治療によりTLRの発現が低下していた(論文投稿中)。また、治療により補助シグナルやTLRの発現が低下しにくい症例は、再発する可能性が高い傾向があり、症例数を集めて再度検討中である。分離したCD4陽性T細胞とCD14陽性細胞をCon Aによる刺激後、活動期および寛解期に発現の高かったICOSとOX40について阻害する抗体とアイソタイプコントロール抗体を培養系に添加した後、共培養し、[3H]ThymidineによるT細胞増殖反応を検討した結果、IFN-γなどのTh1サイトカインやIL-17などのTh17サイトカインが低下していた。さらに、このような液性因子を測定している中で、ぶどう膜炎との鑑別が難しい眼内リンパ腫においてTh1ケモカインであるIP-10が網膜下浸潤型で増加することを見出し、硝子体液中のBCA-1など多くの液性因子が他の難治性ぶどう膜炎と比較して上昇していたため、鑑別に有用なマーカーであることを発見した(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年における実験目標として、ベーチェット病、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病およびぶどう膜炎を有していない健常人の発症期、活動期、寛解期のCD4 T細胞における補助シグナル分子の発現を比較検討することができた。さらに、TLRなどの発現も確認することができた。また、ベーチェット病患者については抗TNF-α抗体(レミケード)投与前後、サルコイドーシスおよびVogt-小柳-原田病について副腎皮質ステロイド薬の全身投与前後における補助シグナル分子の発現を比較検討することができた。次年度では、症例数を増やして検討していく。in vitroの実験として、各疾患から分離したCD4陽性T細胞とCD14陽性細胞をCon Aによる刺激後、活動期および寛解期に発現の高かったICOSとOX40について阻害する抗体とアイソタイプコントロール抗体を培養系に添加した後、共培養し、[3H]ThymidineによるT細胞増殖反応を検討することができた。このような液性因子を測定している中で、ぶどう膜炎との鑑別が難しい眼内リンパ腫においてTh1ケモカインであるIP-10が網膜下浸潤型で増加することを見出し、硝子体液中のBCA-1など多くの液性因子が他の難治性ぶどう膜炎と比較して上昇していたため、鑑別に有用なマーカーであることをこの研究の副次的な成果としてえられた。しかし、各ぶどう膜炎患者末梢血よりゲノムDNAを抽出し、各補助シグナル分子とサイトカインのプライマーを設計し、ABI PRISM3100 Genetic Analyzerで遺伝子配列を読み出し遺伝子変異の有無を検討することについては、今年度に検討することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各疾患ごとに補助シグナル分子とそれに伴うサイトカインの発現および臨床因子(臨床像、臨床経過、視力予後、眼発作回数、前房内フレア、再発までの期間、治療効果)についてレトロスペクティブに検討し、統計ソフトを用いて統計解析を行う。手術を行いえた患者については、手術で得られた検体で検討を行うが、患者ごとに眼内組織を採取することが困難なため、ヒトぶどう膜網膜炎の結果をもとにマウスEAUにおける補助シグナル分子の発現と役割を明らかにする。EAUの作成は6-8週齢のC57BL/6マウスにIRBPペプチド1-20(200μg~400μg)と結核死菌を加えた完全フロイントアジュバンドを混合乳化させたものを首背皮下に免疫しておこなう。EAUの誘導期(免疫直後より免疫7日目まで)、発症期(免疫後14日目と21日目)、寛解期(免疫後30日目と60日目)における虹彩、毛様体、網膜色素上皮細胞、所属リンパ節、脾臓における補助シグナル分子とそのリガンドの発現をフローサイトメトリーと免疫組織学的に検討する。免疫組織染色が不可能な場合にはそれぞれの組織よりcDNAを抽出し、RT-PCRやリアルタイムPCRにより発現を確認する。さらに、誘導期、発症期、寛解期のEAU眼内より虹彩、毛様体、網膜色素上皮細胞を、所属リンパ節よりCD4 T細胞を単離し、共培養する。共培養下に、各補助シグナル分子の阻害抗体とアイソタイプコントロール抗体を添加し、[3H]ThymidineによるT細胞増殖反応とサイトカイン産生を検討する。これにより、各種補助シグナル分子が病気のどの時点に発現し、機能しているか検討し、バイオマーカーとしての臨床的意義を解明する。さらに前年度に研究を推進することのできなかった、各ぶどう膜炎患者の遺伝子変異の有無の検討について検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当機関では、当申請研究に必要となる大型機器は設置済みで、本研究の遂行は現有の実験設備で十分可能である。そのため、主な研究費の使用として、サイトカインを測定するキット(CBA flex kitおよびELISA kit)および、補助シグナル分子(CD28-CTLA-4/CD80-CD86、ICOS/B7RP-1、PD-1/PD-L1-PD-L2、BTLA/HVEM、CD27/CD70、4-1BB/4-1BBL、OX40/OX40L、RANK/RANK-L、CD40/CD40L)などの各種抗体として割り当てる。さらに、実験的自己免疫性ぶどう膜炎を誘導するために必要なIRBPペプチド、結核死菌、完全フロイントアジュバンド、C57BL/6マウス購入費についても割り当てる。また、前年度に購入された実験試薬、消耗品器具や各種kitも残っているため、効率よく次年度の研究費を使用していく予定である。できる限り、次年内に研究結果をまとめ、実験データーの解析や論文執筆に割り当てる予定である。その他、成果発表のための論文投稿費、旅費、英文校閲費、学会誌投稿料が必要であり昨年度に申請していたが、貴重な研究費を最大限生かすため、次年度のすべての研究費を研究遂行するための費用とデーター解析に利用する。そのため次年度は論文投稿費、旅費、英文校閲費、学会誌投稿料は申請せず、申請者の私費で行う予定である。
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