研究課題/領域番号 |
23792016
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
宗正 泰成 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30440340)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 緑内障 / 網膜神経節細胞 / 視神経 / 老化 |
研究概要 |
老化促進モデルマウスのSenescene-accelerated mouse (SAM)は早期から酸化ストレスにより神経変性を来たすマウスで、記憶障害をはじめ種々の感覚障害を生じる。特にSAMP8・SAMP10ではミトコンドリア機能障害を主とした酸化ストレスにより、神経変性を来たす。一方SAMRは正常老化を示す。本研究ではSAMにおける視神経軸索変性及び網膜神経節細胞死を組織学的・分子生物学的に解明し緑内障の機序解明に応用させる。生後1ヵ月、3ヶ月及び6ヶ月のSAMの眼圧はSAMR、SAMP8及びSAMP10において有意差を認めなかった。網膜神経節細胞数に関し、生後1ヵ月では有意差認めないが生後3ヵ月でSAMRに比しSAMP8及びSAMP10で有意に減少していた。抗老化の主要分子であるsirtin1(SIRT1)及び神経細胞の成長や分化及び軸索ガイダンスの制御機構において重要な役割を担っている神経特異性上皮増殖因子Nell2 (neural tissue-specific epidermal growth factor-like repeat domain-containing protein)に関し、単離網膜神経節細胞のimmunoblot及び免疫組織学染色でその発現を検討した。生後1ヵ月齢のSAMP8及びSAMP10のSIRT1及びNell2の発現はSAMRに比し減少していた。この結果はSAMP8及びSAMP10の網膜神経節細胞変性には老化及び成長因子の制御破綻が関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究において網膜神経節細胞変性に神経細胞の成長や分化、成長円錐及び軸索ガイダンスの制御機構において重要な役割を担っているNell2が強く関わっていることが示唆された。Nell2はMass spectrometry及びimmunoprecioitation/immunoblotにてMACF1(Microtubule-actin cross-linking factor 1)と相互してることが判明した。MACF1は網膜神経節細胞の細胞体-軸索の輸送制御などに強く関わっており、Nell2はMACF1と相互することで、網膜神経節細胞の軸索変性及び細胞体死に関わっていると考えられた。Nell2 construct plasmid DNAを作成し、electroporationで網膜神経節細胞に強制発現させると、視神経座滅に対し約40%神経保護効果を示した。Nell2を強制発現することで、MACF1と相互し軸索変性に対し保護的な役割をしめすことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
Nell2細胞体保護及び軸索伸展効果の評価として、網膜神経節細胞をmagnetic beads法で単離後、初代培養を行う。その後EGFPが挿入されたNell2 plasmid DNAを網膜神経節細胞に強制発現させ、軸索伸長効果をLive cell imaging (タイムラプス)にて解析する。軸索伸展効果に関しては酸化ストレスをTNF-α及びbuthionine sulfoximine (BSO)にて細胞体を障害してからGAP43の免疫染色などを用い評価する。 in vivoでは生後1ヶ月のSAMにLenti-Nell2 copGFP WPREの硝子体注射を行う。注射後、Nell2相互分子の変化を生化学的に解析する。Nell2の発現局在はを共焦点顕微鏡にて確認し、蛋白レベルで定量する。軸索変性及び細胞体死は組織学的に検討する。コンピュータソフトウェアのAphelionを用い軸索数・細胞体数を定量する。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず初代培養のneurobasal mediumに比較的費用がかかる。さらにレンチウィルスベクターであるLenti-Nell2 copGFP WPRE作成及び遺伝子導入にも費用がかかる。プラスミド作成にはプライマー、制限酵素、DNAポリメラーゼの購入、DNAシークエンスに関わる試薬も必要である。
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