研究課題/領域番号 |
23792017
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
池田 崇之 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00374942)
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キーワード | 可溶型Flt-1 / HMVEC / レンチウイルス / RNA結合タンパク質 |
研究概要 |
1.可溶型Flt-1産生制御タンパク質(群)の血管新生における役割 平成23年度には可溶型Flt-1の産生を制御しているRNA結合タンパク質が単離できなかったので、引き続きRNA結合タンパク質の単離を行った。制御配列および3'端切断部位周辺に結合しうるタンパク質を9種類にしぼり、それぞれのタンパク質を血管内皮細胞に過剰発現させ、Flt-1の発現を解析したところ、hnRNP Dタンパク質を過剰発現させた時にのみ、低酸素刺激で見られた可溶型Flt-1の減少、および膜型Flt-1の増加が観察された。そこで、hnRNP D遺伝子のshRNAをデザインし、血管内皮細胞でノックダウンしたところ、可溶型Flt-1の増加、膜型Flt-1の減少という、過剰発現とは逆の結果が得られた。したがって、hnRNP Dが可溶型Flt-1産生を制御しているタンパク質である可能性が示唆された。 2.受精卵感染法によるトランスジェニックマウスの作製 平成23年度にマウス可溶型Flt-1を特異的にノックダウンするレンチウイルスベクターを作製したこと受け、受精卵感染法によるトランスジェニックマウスの作製を行った。受精卵感染法は、受精後のマウスから受精卵を取り出すことが必要であるが、あまりうまく行かないため、代替えの方法として、精原細胞感染法によりトランスジェニックマウスを作製することにした。精原細胞感染法は煩雑な操作がなく、雄マウスの精巣にレンチウイルスをうつだけであるため、手技的な制限を受けない。麻酔下に精巣上体に色素を打って予備実験を行ったところ、精巣上体全体に即座に色素が拡散した。この方法では、マウスをほとんど傷つけることなく、またウイルスの漏れも最小限に抑えられることから、非常に安全かつ有効な方法であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
可溶型Flt-1産生制御の分子メカニズムの解明については、可溶型Flt-1産生を制御するRNA結合タンパク質がhnRNP Dである可能性が示唆されたが、hnRNP Dが確かにFlt-1 pre-mRNAに結合しているかどうかが明らかになっていない。計画では可溶型Flt-1産生制御タンパク質の血管新生における役割をin vitroで解析している予定であったが、まだRNA結合タンパク質候補が絞られた段階であり、その役割を解析するところまでは行っておらず、やや遅れていると言える。 可溶型Flt-1過剰発現およびノックダウンマウスの作製については、レンチウイルスベクターを作製しノックダウンマウスの作製まで進んだが、受精卵感染法がうまくいかないことが理由でやや遅れている。現在、受精卵感染法の代替法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 可溶型Flt-1産生制御機構の解明 RNA結合タンパク質hnRNP Dが確かにFlt-1 pre-mRNAに結合していることを証明することによって、可溶型Flt-1産生制御タンパク質であることを明らかにする。hnRNP Dが制御タンパク質であることが証明されたら、より詳細なメカニズムの解明も進むことが期待できる。 2. 可溶型Flt-1過剰発現および可溶型Flt-1特異的ノックダウンマウスの作製 受精卵感染法によるトランスジェニックマウスの作製が困難であることから、精原細胞感染法に代えて作製を試みる。レンチウイルス感染法でうまくいかないようであれば、従来通りのトランスジェニックマウス作製法に切り替えることも視野に入れて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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