研究課題/領域番号 |
23792018
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
厚沢 季美江 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (60387727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 網膜 / ミュラー細胞 / 脂肪酸β酸化 |
研究概要 |
目的:脂肪酸の代謝系である脂肪酸β酸化系は、エネルギー産生に加え脂肪酸の細胞傷害に対する解毒機能としても重要である。網膜は全身組織の中で例外的に、脂肪酸β酸化能がないと言われてきた。本研究では「ミュラー細胞はエネルギー源として脂肪酸を代謝する。その代謝産物を網膜神経細胞に渡し養う。」この仮説を証明することを目的としている。計画:網膜ミュラー細胞、神経節細胞の2種の培養細胞の栄養代謝能を、脂肪酸β酸化能を中心に調べる。さらに、2種の細胞の栄養代謝における相互作用を調べる。平成23年度は初代培養細胞を用いて解析を行い、各細胞の特性を調べるとともに、不死化細胞を作製する。24年度は前年度に作製した不死化細胞を中心に用いて、細胞間の相互作用を調べる計画である。成果:ミュラー細胞の脂肪酸代謝能の解析は、研究協力者、臼田、山口の協力により順調に進んでいる。初代培養細胞を用いた遺伝子発現解析、酵素蛋白検出、in vitro probe assay(脂肪酸代謝によって生じる培養培地中のアシルカルニチンを、質量分析装置により網羅的に測定する方法)により、ミュラー細胞の脂肪酸β酸化能を証明する実験はほぼ終了し、ミュラー細胞に脂肪酸β酸化能が存在することが示された。この結果は、網膜のエネルギー産生機構について新しい知見を提示できると考えている。現在は、脂肪酸代謝とブドウ糖代謝の相互関係を調べるために、それらの代謝産物であるケトン体、ピルビン酸、乳酸の分泌について解析を進めている。遅れている細胞の不死化実験も開始している。神経節細胞の単独培養については方法に困難さがあり未だ確立できていないが、神経節細胞の単独培養、ミュラー細胞との混合培養、両細胞の不死化については予備実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の実験結果は、研究全体の核心部分について陽性の結果であると判断している。そのため、23年度の現在までの達成度を「やや遅れている」と自己評価した。研究実績の概要欄に記載したように、ミュラー細胞については脂肪酸β酸化能の存在を示すことが終了して、代謝産物の解析へと研究は着実に進んでいる。しかし、やや遅れていると判断する理由は次の2点である。問題点1:神経節細胞について解析が進んでいない。問題点2:不死化技術の確立が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
全体としては変更無く遂行可能であると考えている。平成24年度は特に、現在までの達成度欄に示した2つの問題点を解決することが急務である。問題点1の解決のためには、現在方法が確立している脳の海馬初代培養細胞をモデルとして神経細胞の培養法を工夫したい。問題点2の解決のためには、細胞工学を中心として行っている研究協力者、土方、深澤の更なる協力を得て進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた主な理由は、培養細胞の不死化などの細胞工学的実験の遅れが原因である。平成24年度の計画においては細胞工学に必要な試薬に対してさらに補充して使用する予定である。なお、平成23年度終盤に超低温フリーザー(84万円)が必要になり既に購入したが、納品が次年度になったため、23年度使用額には含まれていない。
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