胆道閉鎖症は肝外胆管の閉塞が主たる原因である。しかし、葛西手術時の肝臓組織を病理組織学的に検索すると、肝内胆管も障害を受けている。胆道閉鎖症術後、黄疸消失する場合としない場合があるのは、肝内胆管の障害が原因と考えている。つまり、胆道閉鎖症になると肝内胆管も障害を受けたのち、肝内胆管の再生、さらには胆管のネットワークの再構築が図られる。胆道閉鎖症の術後に黄疸消失するか否かは、その再生過程で障害が生じてしまうか否かなのではないかと仮説を立てている。つまり、そのメカニズムを明らかにすることで術後黄疸消失を確実に得ることが可能となる。 本研究の目的は、胆管上皮細胞の障害が受けたあと、肝芽細胞から胆管上皮細胞への分化・増殖制御に着目し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。 転写因子C/EBPαは発現量の差で胆管上皮細胞もしくは肝細胞への分化の関連を示唆されている。胆管上皮細胞または肝細胞への分化制御のメカニズムは不明であるので、そこでC/EBP αの下流因子を特定し、胆管上皮細胞への分化誘導する詳細なメカニズムを解明すれば、胆道閉鎖症術後の肝内胆管再生メカニズムを解明できると考えて実験計画をたてた。 いままでは肝芽細胞を用いた転写因子C/EBPα標的遺伝子候補の検索するため肝芽細胞の精製を行ったが、必要な細胞数の確保が困難であった。 そこで、胆道閉鎖症術後患者の肝組織を用いてマイクロアレイを行い、各日齢別で黄疸消失の有無を規定する因子を検討した。
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