研究課題/領域番号 |
23792035
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
野瀬 聡子 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90467564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腸管上皮幹細胞 |
研究概要 |
腸管虚血再還流モデルを用いてストレス下における虚血再還流障害後の腸上皮幹細胞の維持、分化増殖に骨髄間葉系幹細胞(MSC)およびそのパラクライン因子が関与するかを明らかにすることを目的とした。 平成23年度は腸管虚血再還流障害モデル(I/R)作成法を確立した。上腸間膜動脈根部を60分間結紮して作成したマウスでは、再還流後24時間までの生存率が50%以下であったため、結紮時間を30分に短縮して同モデルを作成しsham群と比較した。その結果、虚血再還流後24時間の腸管上皮では、Sham群でのChiu分類Grade0に対し、同モデルにおいては著明な粘膜委縮および筋層の菲薄化を認め、一部に絨毛の脱落を認め、Chiu分類Grade3であった。この変化は、虚血再還流障害後7日の腸管上皮では著明な改善が見られた。また虚血再還流障害後の腸管上皮においてはアポトーシスが増加していたが、虚血再還流障害後7日の腸管上皮ではアポトーシスはほとんど認められないという結果を得た。この結果は、アポトーシスと再生のバランスが時間経過により変化していくことを示唆している。また腸管上皮幹細胞マーカーLgr5遺伝子の発現は、虚血再還流障害後の腸管上皮において発現亢進していることが明らかとなった。次年度はこれらの変化がMSC移植によりどう変化していくかを検討する。同時に、MSCのパラクライン因子である繊維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、インターロイキン6がLgr5遺伝子発現を制御しているかをWntシグナル活性と合わせて検討する事で、MSC移植による腸管上皮幹細胞の増殖分化の制御機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腸管虚血再還流障害モデル(I/R)作成法を確立した。また、腸管虚血再還流障害後の腸管上皮における腸上皮幹細胞の発現およびアポトーシスについても検討した。マウスMSCの導入に関して市販のMSCを用いることとした。また、MSCのbeta-galartosidase (LacZ) 遺伝子導入に関しては、アデノウィルスベクターを用いた予備試験で十分な発現が確認できず、多少計画より遅れたが、煩雑な密度勾配超遠心による濃縮操作やカラムによる精製を必要としないレンチウィルスベクターに変更しており、現在のところ、概ね計画通りに遂行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、MSC移植腸管における腸上皮幹細胞の制御機構について検討する予定である。採取したLacZ-MSCをマウス尾静脈より経静脈的に投与し、移植後腸管におけるLacZ-MSCの特徴を明らかにし、腸管上皮幹細胞マーカーLrg5遺伝子の発現の変化と合わせて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験モデル作製、遺伝子導入、細胞分離培養、細胞蛋白解析および免疫組織染色、発現解析に使用する。
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