平成25年度は、虚血再還流障害後の腸管上皮における、骨髄間葉系幹細胞(MSC)による腸管上皮細胞制御メカニズムの解析を引き続き行った。MSCにbeta-galactosidase (LacZ)遺伝子の導入を行いLacZでラベルしたMSC (LacZ-MSC)を作成し、MSC移植群を作成した。1. 2×104/ g body weight 経静脈投与 2. 6×105/ g body weight腹腔内投与 の2群を作成した。両群でmajor mismatchは起きなかったが、腹腔内投与群では、minor mismatchと考えられる腹腔内組織塊形成が見られMSC移植群には適さないと判断した。以下の検討におけるMSC移植群は経尾静脈投与群を用いた。1. 対照群、2. 腸管虚血再還流群 (I/R:虚血再還流後3日)、3. MSC移植群 (I/R+MSC)の3群について検討した結果、腸管組織像は、対照群(Chiu分類Grade0)、I/R群(Chiu分類Grade3-4)であったが、MSC移植群ではChiu分類Grade1-2程度まで改善がみられた。また、腸管におけるアポトーシスは、組織TUNEL染色では、I/R群で対照群に比し増加していたが、これはMSC移植群でも対照群に比すると予想に反し増加傾向を認めた。しかしBrdU染色では、対照群に比しI/R群で増加しているのと同様にMSC移植群でも明らかに対照群に比し増加を認めた。また、腸上皮幹細胞マーカーであるLgr5遺伝子の発現を免疫組織染色にて検討したところ、対照群では発現が弱かったが、I/R群で絨毛に強く発現を認め、MSC移植群では陰窩に発現を認めた。また、X-gal(5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl-β-D-Galactoside)染色では、MSC移植腸管で陰窩に局在して発現を認めた。以上より、虚血再還流後早期の腸管において、MSC移植はアポトーシスの抑制への関与は明らかではないが、腸管上皮幹細胞への分化が促されている可能性が示された。
|