研究課題/領域番号 |
23792044
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山口 憲昭 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (90600578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / リンパ管静脈吻合術 / 静脈角 / 胸管 |
研究概要 |
リンパ浮腫は、乳がん、子宮がん、膀胱癌の手術後にしばしば起こる。本邦での患者数は約10~15万人と推定されている。また、途上国においてはフィラリア症によるリンパ浮腫が問題となっており、現在感染者数は4000万人以上に上る。リンパ浮腫の根治は未だ困難であり、治療法の確立は急務である。治療法としては保存療法(圧迫、マッサージなど)を中心に行われてきたが、1977年にリンパ管静脈吻合術が報告された。主に、皮下の浅い層のリンパ管と静脈が吻合される。しかし、外科治療法としての奏功率は未だ低水準といわざるを得ない。生理的なリンパ管静脈吻合部についての研究は1960年代後半からなされている。動物実験において、左右に単管もしくは複管として認めること、多くは二尖弁を形成し静脈内へ流入すること、胸管の吻合部周辺では平滑筋組織が減少し静脈壁のようになることなどがわかっている。静脈角の弁構造に伴う逆流防止機構は生体内で必須の構造であり、この破綻はリンパ管への静脈血の逆流、リンパ液の回収の遅滞を生じ、臨床的にも乳び胸を生じることが分かっている。以上より、リンパ管静脈吻合部でも静脈血のリンパ側への流入は生じてはならないと考えるのが妥当である。より太い静脈にリンパ管を弁構造を有した状態で吻合する新たなリンパ管静脈吻合術が上記の問題を改善するものと考えた。そこで、平成23年度はラットを使用し、静脈角の詳細な観察を行った。手術用顕微鏡下に左の鎖骨と第一肋骨を切除し、開胸することなく後面の静脈角を露出した。さらに、左の胸腔内に鈍針にてインドシアニングリーン(ICG)を投与し、同静脈角を定点の赤外観察カメラシステム(浜松フォトニクス)にて観察、録画した。また、直径2-3μmの蛍光ビーズを胸腔内に投与し、同静脈角部で蛍光実体顕微鏡にて観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のコンセプトを基にしたリンパ管静脈吻合術について、第55回日本形成外科学会総会で報告した。また、その内容についても英文誌(Plastic and Reconstructive Surgery)に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ管壁が厚い場合、蛍光ビーズを確認できなかったため、実体顕微鏡の対物レンズの工夫が必要であると考えている。ラットに挿管し人工呼吸管理とし、呼吸性変動、リンパ流速、ICG輝度の変化を計測したいと考えている。さらに、静脈角部に存在する弁構造を人工的に破壊し、リンパ管への逆流を観察できないか検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に動物実験にかかる経費(動物購入費、飼育費、実験室賃借料など)に充てる予定である。消耗品(ICG、蛍光ビーズなど)の購入にも充てる予定である。
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