研究課題/領域番号 |
23792045
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小松 星児 岡山大学, 大学病院, 医員 (40423305)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己集合性ペプチドゲル / 局所止血剤 |
研究概要 |
再生医療において細胞が立体的な構造物を作るように誘導するためには、スキャフォールドが必要である。安全な生体組織の再生のために、動物由来成分を含まず、コラーゲンと同等以上の生体適合性と力学的特性の検討が可能なスキャフォールドの開発が求められていた。その素材として注目されたのが、"自己集合性ペプチド"である。自己集合性ペプチドは、20アミノ酸残基程度のペプチドで、水中ではβシート構造を取り、それらが会合してナノファイバーを形成する。このナノファイバー同士が絡み合い、ゲルとなる。この自己集合性ペプチドゲルを皮膚創傷に用いることにより、創傷治癒が促進されると期待されている。創傷被覆材が創傷治癒を促進させるメカニズムは、湿潤環境保持や止血作用によるものである。自己集合性ペプチドゲルは、外科用止血剤として実用化される程の強力な止血作用を有する。また、含水率は99%以上であり、湿潤環境の保持も可能である。それらに加えて、創傷治癒の過程において遊走する細胞の足場となり得る。このように、自己集合性ペプチドゲルは、創傷治癒においても優れた特性を持つと考えられる。岡山大学では、中性領域で強い力学的強度を保持できる自己集合性ペプチドゲル(SPG-178)の開発に世界で初めて成功した。従来の自己集合性ペプチドゲルはpHを酸性に保つ必要があり、周辺への細胞傷害性が指摘されている。平成23年度は主に止血作用についての研究を行った。実験動物としてラットを用いた。肝臓をメスで切開し出血させ創内にゲルを滴下し、止血されるまでの時間を測定した。その結果、数秒で止血が完了することが判明した。また、止血のメカニズムを解明するため、止血直後の出血面を透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、ゲル内のナノファイバーがネットワーク構造を形成していることが判明した。このネットワークが出血面を覆うため止血するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究成果の一部(止血効果)を日本臨床外科学会で報告することができた。また、平成23年度の研究成果については、英文誌に近日投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓の切創以外の出血についても止血可能か、動物実験によって確認する。また、自己集合性ペプチドゲル(SPG-178)が生体内で実際にスキャフォールドとして機能しているかどうか、動物実験によって確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
自己集合性ペプチドゲルは非常に高価である。そのため、主に消耗品(自己集合性ペプチドゲル)の購入費用に充てる予定である。
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