現在、腫瘍切除、外傷、あるいは先天異常において、外見的な醜形に対する再建手術として自家組織移植を中心としたボリューム付加手術が行われている。しかし、移植材料採取の目的で、健常部がドナーとして傷つけられる問題があった。そこで、人工生体材料として鮭コラーゲンを注射針でも注入可能な性状にした上で、注入による移植後に脂肪組織を誘導・生着維持させる物質としてピオグリタゾンの付加を試み、検証した。 初年度で、コラーゲンゲルの材料選別、ピオグリタゾンの至適濃度の検討を行い、次年度で、選択した鮭コラーゲンゲルへのピオグリタゾンの付加について調整を行ったが、一部工程で外部機関に調整を依頼せざるを得なかったため、当初の2か年計画より時間が必要となり、1年間の延長を申請することとなった。予定していた試料の調整後、直ちにマウスを用いた動物実験を行った結果、ピオグリタゾンを付加したコラーゲンゲルでは、ピオグリタゾンを付加していないコントロールのコラーゲンゲルと比較し、有意に多くの脂肪組織に存在が確認できた。今回の成果で、ピオグリタゾンによる脂肪誘導あるいは脂肪生着促進の効果が期待できることが明らかとなった。今後は、より大きなボリュームでの検討や、臨床へ向けた検討を行う予定である。 研究期間が長引いたため、研究成果についての学会発表は省略し、実験後直ちにデータ解析・論文作成を行い、英文論文として、現在、Journal of Biomedical Materials Research: Part B in pressである。
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