乳癌術後乳房再建は近年インプラントをもちいた人工乳房による再建手術が保健適応となり、乳房再建手術の希望者自体も増えて行くと思われる。しかし人工乳房による再建手術の敷居が下がったため、乳房以外の自家組織の犠牲を伴わない人工乳房による再建術の症例が増えて行くとは思われる。そのため皮弁移植を用いた自家組織による乳房再建手術の手術件数は減少して行く可能性はあるものの、自家組織による乳房再建手術自体は、人工乳房を用いた手術とは違い、創部感染に強く、また1回の手術で治療が終了するメリットもあるため今後も本手術の希望者は一定数存在するであろう。 本研究は術野重畳デバイスを用いた手術ナビゲーションシステムによる術中血管損傷回避および、手術操作の正確性の向上を目標とした。 当初、人工モデルを用いた位置の正確性について検討、手術前の血管走行確認への応用、手術中の血管走行の確認を行うこととしていた。人工モデルを用いた位置の正確性の検討は問題なく行えた。しかし、人工モデルのみによる本デバイス評価のみでヒトへの応用は困難と考え、ミニブタを用いた動物実験を経てからの臨床応用を行うこととした。 動物実験の目的は実際の体表面は人工モデルと異なり凹凸があること、また本ナビゲーションシステムを設定する際に事前に3カ所のマーカーのは位置を行う必要があるため、それらの問題を含め臨床応用前に本ナビゲーションシステムの正確性を検討した。 その結果、標的血管の周囲10㎝にマーカーを設置した際、標的血管との位置誤差は手術中に血管を見失うことなく同定でき、8.16±5.08mmであった。 その内容を2014年アジア環太平洋マイクロサージャリー学会において研究成果報告を行った。また、2014年度になり、ヒトへの手術前の血管走行確認への応用についてもすすめており、データ収集をはじめることが出来るようになった。
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