昨年度に引き続き敗血症によって誘導される炎症反応、酸化ストレスの客観的評価法をESR(電子スピン共鳴)装置を用いて検討した。血液中に存在する物質(ヘモグロビン、ブドウ糖、アルブミン等)に人為的に発生させたヒドロキシルラジカルが反応してしまう問題を解決するために、各成分がどれだけラジカル消去能に関わっているかを検討した。同個体から採血し、血球成分のみを分離し、検体を数倍ずつ薄めてヘモグロビン(赤血球)濃度を変えて、ラジカル消去能がどう変化するか、その変化率から、もともとの消去能を推定することを試みた。しかし、生食を溶媒として血球希釈を行ったが、ヒドロキシルラジカルのアダクトは一定化せず、ヘモグロビン以外の要素が関与している可能性が示唆された。また、血漿をESR装置の測定用扁平セルに直接注入して測定しようとすると、ラジカル発生のために照射する紫外線装置によって生じる熱により気泡を生じるためラジカルアダクトが安定しないことが判明した。水溶液では気泡は発生しないため、血漿中の脂質、タンパク質等が関与している可能性があった。測定セルをヘマトクリット毛細管に変更すると、気泡の発生はなく、測定値が安定化したため、血漿をESR測定にかける際は、今後ヘマトクリット毛細管を使用することとした。昨年度は、こうしたESR装置を用いた検討法の確立を主として行った。
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