研究課題
両後肢緊縛/再還流モデルマウスの腎においてIL-6mRNA発現誘導及びiNOSmRNA発現抑制が観察されたことから、IL-6 and/or iNOSを抑制する条件を加えて検討中である。前年度に引き続きマウスの両後肢を1.5時間緊縛・30分再還流後にシベレスタット30mg/kg腹腔内投与し、一定時間後に採取した肺・肝・腎における遺伝子発現を生理食塩水投与群と比較検討した。その結果シベレスタット投与により、肺におけるiNOS発現は有意に減少、GM-CSF発現は有意に増加し、IL-6発現に影響はなかった。また肝・腎ではGM-CSFを除きシベレスタットによる影響は観察されなかった。以上から緊縛/再還流障害においてシベレスタットの抗炎症作用は肺への影響が強いものと考えられた。次にマウス両後肢1.5時間緊縛モデルにおいてエダラボン3mg/kgを緊縛30分前または再還流30分前に腹腔内投与し、緊縛解除3時間後に採取した肺・肝・腎における遺伝子発現を生理食塩水投与群と比較検討した。その結果エダラボン投与によるIL-6及びiNOSの発現量に有意差は認めなかったが、臓器と同時に採取した血漿を用いてd-ROMs(酸化ストレス度)及びBAP(抗酸化ポテンシャル)を測定したところ、エダラボン投与群では生食群に対してd-ROMsが有意に低かった。以上からエダラボンは抗酸化力を発揮するものの、今回の条件では緊縛/再還流障害において臓器への著明な影響は及ぼさないと考えられた。IL-6/iNOSダブルノックアウト(DKO)マウス作成に関しては、継代飼育中のIL-6+/-・iNOS+/-マウス、IL-6-/-・iNOS+/-マウス、IL-6+/-・iNOS-/-マウスをそれぞれ交配して生まれた仔417匹についてgenotypingを順次行っているが、H26年3月末現在でDKOマウスは確認されていない。
3: やや遅れている
NOS阻害剤投与による実験条件選定には未着手である。IL-6/iNOS DKOマウス作成については、第2世代以降の約62%のgenotypeがIL-6+/-・iNOS+/-であり、平成26年3月末時点でDKOマウスは確認されていない。
今年度はNOS阻害剤投与による実験を選定するとともに、引き続きDKOマウス作成を行う。後者については、成体に達する前に死亡したマウスの検討も加え、このgenotypeが致死的である可能性も考慮する。シベレスタット投与群及びエダラボン投与群に関しては、既に採取済みの検体を用いてリアルタイムPCRによる分析を継続するほか、新たな投与条件も検討する。
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Life Sciences
巻: 92 ページ: 694-700
10.1016/j.lfs.2013.01.026