研究課題/領域番号 |
23792086
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
角 由佳 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40403084)
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キーワード | 敗血症 / ATP / adenosine / 虚血再灌流障害 |
研究概要 |
本研究は、臨床症例において、敗血症を代表とした全身性炎症反応症候群の炎症トリガーとして、ATPがどのような役割を示しているのかを明らかにすることを目的としている。 1.ダメージをうけた細胞からATPが血液中に放出され、そのATPが好中球を刺激することで過剰な好中球活性に働くという仮説をもとに、HPLCを用いて敗血症患者における血漿中のadenylates(ATP,ADP,AMP, adenosine)を測定した。その結果、敗血症患者では、健常者に比し、炎症を惹起するATPが高値であるだけでなく、抗炎症作用をもつadenosine が有意に低値であることが明らかになってきた。重症度の相関は、現時点では明らかではないが、最重症例ではATPが低値を示すことが示唆され、敗血症におけるミトコンドリア機能不全との関与が考察される。 2.全身性虚血再灌流障害である心肺停止後患者では、明らかにATPが高値を示し、血中Lactate や心肺停止時間との相関が認められた。今後、症例を重ねることで、心拍再開後のATPが予後予測に使える可能性が考察される。 3.ATP高値を示す急性期に白血球の活性化の指標であるCD11bが高値をしめし、その後速やかに低下することがわかり、臨床症例でもATPが好中球機能活性に寄与していることが明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全身性炎症反応症候群を引き起こすさまざまな病態において、ダメージをうけた細胞からATPが血中にでている事が明らかになってきた。重症度や患者の予後との相関については、まだ症例数を増やす必要があり、今後も症例を重ねていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.症例を重ねて、ATPの経時的変化と、各種臨床マーカーとの相関関係を見出す。 2.徐々に明らかになってきた最重症症例(急性期死亡例)に関するミトコンドリア機能不全にも注目し、ATP値低値がどのように病態にかかわっているか研究をすすめる。 3.SIRS患者で、ATPが高値であるだけでなく、adenosine が低値であることに注目し、患者のATP分解能の低下が、病態にかかわっている可能性について、患者血液にATPを添加し、どれぐらいの速さで分解できるか実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際ショック学会およびアジア救急医学会、日本救急医学会に、抄録を提出済みであり、積極的に学会発表を行うための参加費や、ボランテイアへの協力費、海外の研究協力者へ検体を送る費用そして白血球機能の評価に使う抗体や各種試薬の購入などに研究費を使用予定である。
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