研究概要 |
生体は生体侵襲に対して非特異的な反応を引き起こすという仮説をもとに、sepsisだけでなくsepsis-like syndromeとも評されるpost-cardiac arrest syndrome (PCAS)や、sepsisと同様に血管内皮細胞障害を引き起こす重症外傷の臨床サンプルにおけるAngiopoietin(Ang)をはじめとした血管新生関連因子についての研究を行った。sepsis, PCAS, 重症外傷の患者のICU入室時、3日目、5日目に血液データや各種臨床データを採取し、具体的にはAngなど血管新生関連因子の経時変化、さらに予後、臓器不全発症と血管新生関連因子との関係、またこれに関係する因子と凝固線溶マーカーとを多変量解析を用いて解析した。3つの侵襲すべてにおいて、Ang2がDIC、臓器不全発症を通じて、予後不良に強く関係しているという結果になった。この結果はsepsisに代表される血管内皮細胞傷害が病態の中心となる臓器障害の新しい治療ターゲットとしての高い妥当性を示唆するものである。またARDS発症においてもAng2が深く関与しているという結果を得ている。また動物実験の予備実験として、敗血症モデルを確立させた。LPS15mg/kgを腹腔内投与にて血中TNF-αが上昇することを確認した。我々実験グループの過去のモデルと相違ないことを確認している。また、動脈ライン、静脈ライン確保の手技も確立し、バイタルサインモニター、薬剤の静脈内投与も可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
1)実験モデル:LPS誘発ラット敗血症、2)標的臓器:肺。組織免疫染色を行いVEGF, aigiopoietinなど血管新生関連因子の発現と局在を確認する。3)標的分子:ELISA、immunoprecipitation(IP)-Western blotting法を用いてAng1, Ang2, Tie2, sTie2, VEGF, VEGFR1/VEGFR2)(VEGF受容体)の推移をみる。また同時に FVIIa, FXa, thrombin, PAI-I, PT, APTT, fibrinogen, anti-thrombin, FDP, D-dimerなど凝固線溶系指標を測定し、それらの関係を調べる 。また同様にwestern blot, RTPCRを使用してこれらの物質の組織蛋白およびmRNA発現を確認する。4)標的機序:凝固線溶反応連関亢進、血管透過性(炎症亢進)。5)臓器不全指標:血液ガス分析、wet/dry ratio, BALF 131I Alb leakageを確認する。同時にDICの指標として組織Fibrin, 血管内fibrin発現を確認する。6)作動薬・阻害薬:ALI/ARDS、および組織・血管内フィブリン発現がAng2 blocker, Tie2 agonist/antagosinis, などを使用することにより改善することを確認する。臨床データの解析はほぼ終了しているので、その成果を海外、国内の主要学会で発表、また英文誌への投稿を行う。
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