研究概要 |
生体は生体侵襲に対して非特異的な反応を引き起こすという仮説をもとに、前年度から引き続いて、sepsisだけでなくsepsis-like syndromeとも評されるpost-cardiac arrest syndrome (PCAS)や、sepsisと同様に血管内皮細胞障害を引き起こす重症外傷の臨床サンプルにおけるAngiopoietin(Ang)をはじめとした血管新生関連因子についての研究を行い、これらの結果は、英文誌にpublishされた。(Wada T, et al. Crit Care 16:R171, 2012. Wada T, et al. Crit Care 16:R63, 2012.) またこれらの結果を、日本救急医学会学術全国集会のシンポジウムにおいて発表した。またPCASにおける臓器不全発症に関わる凝固線溶反応に関する論文が、近々発表される予定である(Wada T, et al. Thromb Res 2013 in press)。この結果はsepsisに代表される血管内皮細胞傷害が病態の中心となる臓器障害の新しい治療ターゲットとしての高い妥当性を示唆するものである。またARDS発症においてもAng2が深く関与しているという結果も英文誌にpublishされた(Wada T, et al. J Inflamm, 10:6, 2013.) 動物実験においては、動脈ライン、静脈ライン確保の手技も確立し、バイタルサイン モニター、薬剤の静脈内投与も可能となったが、使用薬剤の入手が困難であり予定通りの結果を得ることができなかった。今後血管新生関連因子だけでなく、それらの発現を調節するHypoxic inducible factor-1α(HIF1α)も生体侵襲に合併する臓器不全の治療標的として、研究を進める予定である。
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