研究概要 |
敗血症患者を対象として,(1) 血管新生系因子及びその可溶性受容体と多臓器不全との関係, (2)DICに伴う血小板減少症,トロンビン形成と組織低酸素がこれらに及ぼす影響について研究を行った。 計50人の患者を,DIC群(37人)と非DIC群(13人)の2群に分けた。DIC群は,SOFAの高スコア,多臓器不全症症候群(MODS)の高発症率を示し,血中の可溶性フィブリン値と乳酸値も高値であった。血管内皮増殖因子(VEGF),VEGF受容体2可溶性分画(sVEGFR2),angiopoietin 1 (Ang 1)の各血中レベルと Ang 1/angiopoietin 2 (Ang 2)比率は低下を,VEGF受容体1可溶性分画(sVEGFR1), Ang 2は増加を示した。血中の可溶性Tie 2値にはDIC発症の有無での有意差はなかった。DIC群におけるVEGF,sVEGFR1,及びAng 2の各血中レベルには,SOFAスコアとの相関を認めた。DIC群のAng 2レベルには,生存群と非生存群との間,及びMODS有り群と同無し群の間で明らかな有意差を認めた。Ang2 を独立変数とするROC曲線下面積(AUC)は,アウトカムが死亡の場合及びMDDSの場合で,それぞれ0.710, 0.784であった。血中VEGFレベルは,血小板数と強い相関を示した。可溶性フィブリン値と乳酸値は,DIC群のVEGF,sVEGFR1,及びAng 2の各レベルと相関を示した。 以上より,VEGF, sVEGFR1, Ang2,及びAng1/Ang2比,特にAng2は,敗血症性のDICやMODSの発症病態に関連している事,及び,VEGF, sVEGFR1, Ang2の各血清レベルはDIC性血小板減少,トロンビン産生,血中乳酸値の各々と強い相関関係を有する事が示唆された。
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