昨年度に引き続き、本年度は以下の実験を行った。 1)MFG-E8発現抑制による癌細胞の機能変化解析:口腔扁平上皮癌由来細胞系ZK-1を用いて、siRNA導入によりMFG-E8発現を抑制したところ、細胞増殖能が有意に低下した。細胞周期解析およびアポトーシス解析の結果から、MFG-E8抑制細胞は細胞周期が遅延するだけでなく、アポトーシスが亢進することが明らかとなった。さらに、マトリジェル浸潤試験では、MFG-E8抑制により浸潤能も低下した。 2)試験管内アポトーシス細胞貪食実験:紫外線(UV)照射によってアポトーシスを誘導した蛍光標識Jurkat細胞を口腔扁平上皮癌由来細胞系ZK-2に添加して24時間共培養したのち固定・染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。アポトーシスをきたしたJurkat細胞はZK-2細胞によって積極的に貪食され、その際、MFG-E8が貪食されたアポトーシス細胞周囲に濃縮することが示された。 3)リコンビナント(r)MFG-E8添加による貪食亢進:UV照射したJurkat細胞にあらかじめrMFG-E8を添加した。すると、rMFG-E8はUV非照射Jurkat細胞に比べ、UV照射Jurkat細胞により多く結合することがわかった。さらに、これらをZK-2に添加したところ、rMFG-E8を添加したUV照射Jurkat細胞は、より高頻度にZK-2細胞によって貪食されることが明らかとなった。 昨年度に行った病理組織標本でのMFG-E8発現解析に加え、本年度施行の培養細胞を用いた実験の結果から、MFG-E8は癌細胞同士のアポトーシス細胞貪食を促進するとともに、癌細胞機能を亢進させる可能性が示された。
|