研究課題/領域番号 |
23792102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲葉 裕明 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70359850)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | P. gingivalis / トロホブラスト細胞 / DNA damage / アポトーシス / 細胞周期 / 早産 / 歯周病 |
研究概要 |
本研究費では、歯周病菌P. gingivalisとサイトメガロウイルス重複感染における早産モデルをマウスモデルで確立し、細胞培養系との併用により、その病態を明らかにすることを目的とする。本年度は、歯周病菌P. gingivalis-サイトメガロウイルス重複感染モデルマウスの確立と細胞培養系を用いた感染細胞のシグナル伝達機構の解明を行った。重複感染モデルマウスは、妊娠マウス感染モデルならびにサイトメガロウイルス感染モデルを併用して行った。しかしながら、P. gingivalisの定着ならびに連続感染によりマウスの生存に問題があるため、適した感染方法を模索している。現状では、口腔内からの感染、尾静脈や頚静脈からの感染が効果的な安定した感染方法であることが確認されつつある。細胞培養系は、P. gingivalis菌に感染された胎盤栄養膜細胞は、細胞周期に異常をきたし(G1 arrest)、Ras-ERK1/2 pathwayを介したアポトーシスに至ることが明らかにされている。本年度は、Ras-ERK1/2 pathwayによるアポトーシス誘導の詳細を明らかにすることができた。Ras-ERK1/2 pathwayの下流に位置するEts1/Ets2ならびにp16は、感染後、時間依存性に活性化されることが明らかになり、これらの分子によるアポトーシス誘導が発見された。Ras-ERK1/2 pathwayだけでなく、複数の経路を介してアポトーシスが誘導されていることが明らかにし、現在は、各経路の詳細を解析している。これらのデーターは現在、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病菌P. gingivalisとサイトメガロウイルス重複感染マウスモデルは、P. gingivalisの定着させるための感染方法に時間が要した。現在は、安定した感染方法を確立しつつあるところであり、マウスモデルにおいてはやや遅れ気味かと思われる。一方、細胞培養系実験に関してはおおむね順調に進展していると思われる。申請者らが以前に報告したシグナル伝達に基づいた経路の詳細を解析することができた。興味深いことに、アレイデーターによりP. gingivalis菌に感染された胎盤栄養膜細胞は、複数の経路によりアポトーシスが誘導されていることが明らかになった。そのため、細胞培養系の解析内容が増え、多少時間がかかっているものの、全体的にはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
歯周病菌P. gingivalis-サイトメガロウイルス重複感染モデルマウスの確立する。その上で、胎児の出生時期や数、体重、発育状況を観察する。サイトメガロウイルスおよびP. gingivalis 菌の検出は、PCR 法により行う。マイクロアレイを用いて出産後の胎盤の遺伝子発現プロファイルを比較し、申請者が発見した特定分子を中心に解析を行う。細胞培養系を用いて、P. gingnivalis感染によりアポトーシスを誘発する複数の経路の解析を行う。さらにマウスデーターおよび本年度明らかにした培養細胞系のデーターを比較し、ターゲット分子に対応するsiRNA を設計し、in vitro 培養細胞実験系でノックダウン系を作成する。作成したノックダウン細胞にP. gingivalis 菌を感染させ、病態発症に関与する分子を同定する。また病態発症因子を活性化させるP. gingivalisのビルレンス因子も同時に明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。次年度は、歯周病菌P. gingivalis-サイトメガロウイルス重複感染モデルマウスのアレイ解析、またsiRNA作成に昨年度からの継続分および次年度の研究費、150万円を使用する予定である。また、学会参加ならびに論文投稿(英文添削含む)に使用する予定である。
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