近年、広汎な疫学研究から、歯周病と早産および低体重児出生との関連性が指摘されることとなった。この原因は、P. gingivalisが胎盤や羊水から検出されたことから、本菌による血行性経胎盤感染と考えられている。我々は以前、P. gingivalisが胎盤の栄養膜細胞に付着・侵入すると、G1期での細胞周期停止を誘導し、細胞増殖を妨げることを明らかにした。本研究では、ヒト胎盤栄養膜細胞にP. gingivalisを感染させ、DNA損傷シグナル経路の解析を行った。P. gingivalisの感染は、DNA損傷シグナルであるATR、Chk2およびp53をリン酸化した。さらにG1期の停止とアポトーシス誘導中にp53の蓄積とアポトーシスの誘発に関連する転写因子Ets1の増加が認められた。P. gingivalisの付着・侵入は、細胞周期G1期停止やアポトーシスを導くDNA損傷シグナルの活性に関与していることが示唆された。これらのデーターをもとに、サイトメガロウイルス感染による影響を調べる基盤を作成することができた。
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