研究概要 |
副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)は、活性型ビタミンD3(1,25D)とともに血中のリン(Pi)やカルシウム(Ca)の調整に深く関わっている。しかし、慢性腎不全の患者は高Pi血症および低Ca血症に陥っており、改善するため副甲状腺からPTHが分泌される結果、副甲状腺過形成となってPTHが恒常的に過剰分泌されるようになる。本件申請者らはこれまで、1,25D、PTHおよびその他の因子(FGF23、老化関連タンパクKlotho等)による骨局所でのミネラル代謝調節において研究を行っており、中でも分泌型Klothoが直接血中PiおよびCa濃度に影響することなく骨の石灰化を調節していることを明らかにした。 本件ではさらに、ラット頭頂骨由来骨芽細胞(in vitro)およびマウス頭蓋骨(ex vivo)を用いて、PTHによるFGF23の発現調節について検討したところ、PTHはFGF23のプロモーター活性を促進するが、mRNAおよびタンパクレベルでの変動には有意差が得られないことが明らかとなった。一方、1,25DによるFGF23発現誘導下では、プロモーター活性は促進するもののその程度が低下し、1,25DによるFGF23 mRNAおよびタンパク発現誘導が抑制されることが明らかとなった。その一因として、PTHによるビタミンD受容体およびIII型ナトリウム依存性リン酸トランスポーター(Pit1)の発現低下が認められた。また、FGF23はMAPKカスケードのERKをリン酸化することがわかっているが、PTHはPKAシグナルを介してERKの脱リン酸化酵素MKP1のリン酸化を促進し、FGF23のシグナルを減衰させることが明らかとなった。 以上より、PTHによるFGF23の発現およびシグナル調節の機序が一部解明された。これを元に、より詳細な下流因子の特定が期待される。
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