研究課題/領域番号 |
23792110
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
庄子 幹郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10336175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯周病細菌 / リポ多糖 |
研究概要 |
歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisのLPSには、O抗原鎖の組成が異なる2つのLPSがあること(O-LPSとA-LPS)が報告されているが、それらのLPSの生合成機構については、未だ不明な点が多い。また、A-LPSは本菌の病原因子を菌体表面にアンカーするのに密接に関わることから、その解明は重要である。 本菌は血液寒天培地上で黒色集落を作る。この黒色色素はミューoxo-heme dimerであり、ヘモグロビンより産生されるが、産生には本菌のKgpプロテアーゼが関与する。kgpの初期遺伝子産物はC末端側に保存されたC-terminal domain(CTD)を有するCTD含有蛋白質の1つである。既に我々は、CTD含有蛋白質を菌体表面に輸送する分泌装置に関わる遺伝子の変異や菌体表面へのCTD含有蛋白質の局在化に関与するA-LPSの生合成関連遺伝子の変異により非黒色集落が形成されることを見出している。故に、本菌の黒色色素形成に関わるさらなる分子を探索することで、LPS生合成に関わる新奇の分子が見つかる可能性を着想した。 トランスポゾン変異法により、ベージュ集落を示す株を得た。トランスポゾンはHypothetical proteinをコードするORF内に挿入していた。次に、その遺伝子の欠失株を作製した。この新しい遺伝子の欠失株も、いままでの非黒色集落形成変異株同様、ジンジパイン活性や赤血球凝集活性は野生株に比べ減弱していた。A-LPSを認識する抗体にてウェスタン解析を行ったところ、野生株に比べその遺伝子欠失株では低分子産物を認識した。また、LPS を精製したところ、遺伝子欠失株のそれは野生株に比べO抗原鎖の長さが短くなっていた。これらの結果から、その遺伝子産物は大腸菌のO抗原鎖の長さを制御する機能を持つWzz蛋白質の機能的ホモログであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスポゾン導入変異法により、リポ多糖合成に関わる新奇の遺伝子を同定することができた。その遺伝子はHypothetical proteinをコードすると注釈されており、これまでその役割は不明であったが、変異株を用いた様々な解析から、O抗原鎖の長さを制御する機能を持つWzz様蛋白質をコードしているものと推測している。
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今後の研究の推進方策 |
Wzz様蛋白質をコードする新奇遺伝子の変異株より、糖結合型HBP35蛋白質を精製し、糖鎖の結合様式を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
精製した糖蛋白質より、糖蛋白質の成分分析を行う。具体的には、質量分析を用いた糖ペプチドの分取・同定を試みる。それがうまくいかない場合には、糖蛋白質の糖鎖を蛍光標識した後、HPLCで分離し、成分分析を試みる。
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