研究概要 |
Porphyromonas gingivalisは、歯周病に関与する最重要細菌として知られている。本菌の病原因子であるタンパク質分解酵素等は、タンパク質のC末端側に保存された領域(C-terminal domain: CTD)を有する。したがって、CTD含有タンパク質の輸送や局在化を明らかにし、基礎的理解を深めることは、抗菌医薬開発などへの応用に役立つものと考えている。CTD含有タンパク質は、新規の分泌装置であるPor secretion systemにより菌体表面に分泌され、Anionic lipopolysaccharideに結合されることを明らかにしている(Sato et al. 2010; Shoji et al. 2011)。英国のCurtisらは、本菌のLPSには、ConventionalなタイプのO-LPSと陰性荷電を示すA-LPSの2種類があること、ならびに、O抗原ポリメラーゼであるWzyとO抗原リガーゼであるWaaLの同定を報告している。しかしながら、それ以外のO抗原生合成に関与する分子については、不明であった。トランスポゾン変異導入法により、血液寒天培地上で黒色色素形成減弱株を見出した。トランスポゾンはPGN_2005遺伝子内部に挿入されていた。遺伝学的解析から、PGN_2005タンパク質はO抗原chain length regulatorであることを明らかにした。さらに、相同性解析からO抗原フリッパーゼ(PGN_1033)、O抗原initial glycosyltransferaseである WbaP(PGN_1896, PGN_1233)を見出した(Shoji et al. 2013)。これらが欠損すると菌体表面のタンパク質分解酵素活性が減弱することから、LPSのO抗原生合成を標的とした阻害剤の開発は有望な抗菌医薬の候補となりうると予想される。
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