研究課題
本研究は黄色ブドウ球菌の口腔内定着機構の解明を目的としており、申請者は以下の2点に着目して研究を行った。1つ目は、唾液凝集素gp340を介した歯科材料への結合能、2つ目は 口腔内常在菌の産生する抗菌物質(バクテリオシン)に対する抵抗性である。1については、黄色ブドウ球菌臨床分離株50株を用いたgp340を介した歯科用材料付着能検証した結果、13株にてgp340依存性の歯科材料への付着が認められた。現在は、gp340依存性の歯科材料への付着が認められた黄色ブドウ球菌の一つであるMW2株について、トランスポゾンによるランダム不活性化株を作製し、gp340への付着因子の同定を行う予定にしている。2については、黄色ブドウ球菌の二成分制御系因子(TCS)不活性化株15株ならびに未解析トランスポーター不活性化株13組について、口腔や腸管、皮膚に常在するバクテリオシン産生株に対する感受性検証を網羅的に行った。その結果、classIバクテリオシン産生株に対して3組のTCS不活性化株ならびに4組のトランスポーター不活性化株の感受性の増加が認められた。3組のTCSのうち1組は、申請者らがバシトラシン耐性に関与することを明らかにしたTCS(BceRS)であった。このことから、BceRSは細菌の産生するバクテリオシンのうち、classIバクテリオシン耐性にも関与するという新たな知見を得た。また、口腔内細菌であるStreptococcus sanguinisはバクテリオシンとして過酸化水素を産生することが知られているが、過酸化水素を産生するS. sanguinisに対しても上記の3組とは別の2組のTCS不活性化株において感受性の増加が認められた。
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