研究課題/領域番号 |
23792117
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
三輪 容子 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (80409218)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 歯胚 / 甲状腺ホルモンレセプター / 両生類 |
研究概要 |
歯胚の再生についてはマウス胎児より人工歯胚を培養し成体に移植し萌出に成功している。しかし有尾両生類アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)では顎骨切除後には歯胚原器の有無に関わらず歯胚も含めて顎骨が再生し歯牙の萌出が見られることが報告されている。アカハリモリ顎骨の中には継続歯胚が連続的に発生しているため、歯胚原器を誘導する要素が顎骨に存在すると予測される。歯の発生には歯堤から遊離した上皮系細胞・間葉系細胞間で相互作用し歯冠および歯根の形態を決定して歯胚が形成される。これまでBone morphogenetic proteins (BMPs) やsonic hedgehog (Shh) がエナメル上皮の形成に関与しているという報告がなされているがBMP4のシグナルは甲状腺ホルモンがshhを介して伝達され、両生類の腸粘膜上皮細胞の増殖を促すことが報告されていることから甲状腺ホルモン/レセプター(TH/THR)系による、より上流からの歯胚形成への関与の可能性が高いと考えた。このため本年度はTHRのクローニングから得られたmRNAの配列からプローブを設計しin-situハイブリダイゼーション法にて歯胚形成における上皮陥凹からエナメル質形成までの全ての過程で甲状腺ホルモンレセプターのmRNAレベルでの発現を確認した。また同時に抗THR抗体を用いて同様の部位で免疫組織染色を行い発現の時期と局在性を検討した。その結果THRは象牙前質形成と石灰化開始期において象牙芽細胞の歯冠側で強い発現が見られることが確認された。今回の結果から発現動態を観察することで歯胚再生に関与する細胞群のネットワークを構築し歯胚原器の誘導と再生までの機構にTHRが何らかの影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アカハライモリの下顎の半側を切除し、歯胚の発生初期~完成までの種々のステージの顎顔面部の組織を採取した。アカハライモリTHRのmRNAをクローニングし、得られた配列から数種のプローブを作成し in-situハイブリダイゼーションで良好な反応が得られるプローブ設計条件を確立した。また、抗THR抗体による免疫染色法について染色条件を各種の抗原腑活化処理を試み確立しin-situハイブリダイゼーションとの整合性を補完した。その結果THRは象牙前質形成と石灰化開始期に特徴的な発現を示していることが確認出来た。
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今後の研究の推進方策 |
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)を用いた甲状腺ホルモン阻害薬投与実験に現在取り組んでいる。甲状腺ホルモン阻害剤投与実験下でアカハライモリの下顎の半側を切除し、顎の再生初期~完成までの種々のステージで顎顔面部の組織を採取する。今年度確立したin-situハイブリダイゼーション、抗THR抗体による免疫組織学的染色を採取した再生顎骨組織でも行い再生過程を観察し考察を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はin-situハイブリダイゼーション、抗THR抗体による免疫組織学的染色の方法と条件を確立することが出来ました。予想していたより簡単に条件が決まったため、試薬代が安く上がり本年度予算が余ることになってしまいました。このため次年度にはin-situハイブリダイゼーション、免疫組織学的染色法に加えてリアルタイムPCR法を用いた定量的解析を取り入れようと考えています。また学会発表、論文発表に必要な経費も使用予定です。
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