研究課題/領域番号 |
23792118
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
南部 隆之 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (80367903)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 口腔細菌 / バイオフィルム |
研究概要 |
Actinomyces orisのバイオフィルム形成機構の解明を目指し,高度にバイオフィルム形成能を維持しているK20株,MG-1株を供試菌として用い,次の2つの実験系列を並行して遂行している.1つ目は,既にドラフト情報が得られているK20株ゲノムの解読である.まだ完全解読には至ってはいないが,現在コンティグ配列をサンガー法を用いて順次連結している途中である.また,得られたゲノム情報を既知のMG-1ゲノム情報とin silico解析で比較し,バイオフィルム形成に関わる遺伝子や発現制御系の同定を試みている.2つ目は,トランスポゾンを用いた変異導入によるバイオフィルム欠損株の単離とその原因遺伝子の同定である.MG-1株において12株のバイオフィルム欠損株を得ており,そのうち3株においてトランスポゾン挿入部位の決定に至っている. 本研究課題の遂行により,初期付着細菌であるActinomyces属細菌のバイオフィルム形成に関わる重要な遺伝子候補がいくつか同定されてきた.本研究課題をさらに進めることで,この細菌種のゲノムレベルでの分子解剖を可能にし,口腔プラークの初期形成段階の機構の解明にも大きなインパクトを与えるものと確信している.そして,本研究課題で明らかになったバイオフィルム関連遺伝子の機能発現の全容を明らかにし,これを阻止することによってバイオフィルム形成を制御する方法の開発につながるものと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pyrosequence法により既に得られているA. oris K20株の約1,300のコンティグ配列をサンガー法を用いて連結している.また,トランスポゾン挿入によるバイオフィルム欠損株の単離については,MG-1株において12株のバイオフィルム欠損株を得ており,そのうち3株においてトランスポゾン挿入部位の決定に至っている.これらは当初予定していた平成23年度の研究計画のとおりであり,研究計画は概ね順調であると認識している.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,当初の計画通り「3. バイオフィルム形成に関わる遺伝子群の同定」,「4. K20株とMG-1株ゲノムを用いたバイオインフォマティクス解析」,「5. 相同組換えによるバイオフィルム欠損株の作成」について実験を進めていく予定である.この中で,「5」については計画ではgalK遺伝子をカウンターマーカーとして用いる計画にしているが,これに加えて新規にmCherryをカウンターマーカーとする系も構築する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度における研究経費は,大きく1) 細菌培養に関わる費用,2) 分子生物学的解析に関わる経費である.具体的には,1) 細菌の分離・培養に関連する器具および培地の費用,培養装置維持費など,2) トランスポゾン・PCR・RT-PCR・プライマー合成・制限酵素・ベクター・シークエンスなどの費用が含まれる.その他は成果発表のための経費である.また,平成23年度は科研費支給の決定が遅かったため,研究費の一部を平成24年度に繰り越しているが,繰り越した研究費を効率的に実験を実施する為の消耗品購入に充てる予定にしている.
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