研究課題
超高速シークエンサーSolexaを用いて、軟骨細胞分化能の高いC3H10T1/2細胞と分化能の低いNIH-3T3細胞の遺伝子発現解析を行った。遺伝子プロファイリングの結果、C3H10T1/2細胞に高発現する転写因子としてAridファミリーに属するArid5b (AT rich interactive domain 5b) を見出した。免疫組織染色によりArid5bはマウス成長板の増殖軟骨層に強く発現していることが示された。C3H10T1/2細胞にArid5bを過剰発現すると、Sox9の転写活性とCol2a1 mRNAの発現が顕著に促進され、Arid5bとSox9の物理的結合がPull-downアッセイにより認められた。興味深いことにArid5bはヒストン脱メチル化酵素Phf2と結合し、Phf2を Col2a1遺伝子プロモーター上に誘導することによりH3K9me2の脱メチル化を促進することが、ChIPアッセイにより明らかとなった。Phf2遺伝子のノックダウンはSox9誘導性の軟骨細胞分化を抑制した。Arid5b遺伝子欠損マウス(Arid5bKO) は内軟骨性骨化の遅延による成長障害が認められ、Sox9誘導性の軟骨細胞分化能も顕著に低下していた。さらに、Arid5bKOマウス由来の初代培養軟骨細胞では、野生型に比較してCol2a1遺伝子プロモーター領域へのPhf2の誘導が阻害されていること、またH3K9ジメチル化が亢進していることが明らかとなった。以上の結果より転写因子Arid5bはPhf2をCol2a1遺伝子プロモーター上に誘導しヒストン脱メチル化を促進することにより、Sox9標的遺伝子の転写を活性化し、軟骨細胞分化を制御することが明らかとなった。Arid5bは骨格形成をエピジェネティックに制御する重要な因子の一つであると推察される。
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