研究課題/領域番号 |
23792124
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
長谷川 敬展 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (50447273)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アクアポリン / 翻訳後修飾 / ユビキチン化 / リン酸化 / 唾液腺 / 細胞内膜輸送 |
研究概要 |
これまでの研究で、唾液腺の水チャネルアクアポリン5(AQP5)はリン酸化およびユビキチン(Ub)化の可逆的な2種の翻訳後修飾を受けることを見出し、本研究で唾液分泌におけるこれら修飾の生理学的意義を探っている。 <リン酸化>本年度ではAQP5リン酸化に関する研究成果をまとめ、マウス唾液腺(顎下腺および耳下腺)において、cAMPシグナルでAQP5の259番目スレオニンが素早く一過的に細胞膜上でリン酸化されることを学術誌に報告し(Am. J. Physiol. Cell Physiol, 2011)、このリン酸化は唾液タンパク質分泌過程に関与するがAQP5細胞内輸送トリガーである可能性は低いことを示した。<Ub化>カルシウムシグナルでAQP5C末端領域のリシンが素早く一過的に短鎖Ub化されることを既に見出しており、唾液水電解質分泌過程への関与が示唆されるが、本年度では役割を明らかにするには至っていない。AQP5Ub化は小胞体ではなく細胞膜上で起こること、プロテアソーム分解には関与しないことなどの、最も想定されるエンドサイトーシスやライソソーム分解への関与を示す傍証を得るのに留まっている。<相互作用>AQP5両翻訳後修飾の相互作用を明らかにする目的の先行実験で、イソプロテレノール(cAMPシグナル)とピロカルピン(カルシウムシグナル)を同時投与したマウスの唾液腺では、Ub化がやや抑制され、脱リン酸化が抑制される傾向であった。AQP5修飾に対するcAMPとカルシウムの両シグナル経路間クロストーク、あるいは修飾同士の相互作用が存在することが明らかとなった。今後、AQP5変異体培養細胞の解析などで両修飾の純粋な相互作用を調べ、唾液分泌におけるその意義を探っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的はAQP5翻訳後修飾のリン酸化およびユビキチン化の役割を明らかにすることである。本年度でAQP5のリン酸化については学術誌に報告をしたものの、当初予想されたものとは異なる機能が新に想定されたため、リン酸化の役割の同定に至っているとは言い難い。同様に、ユビキチン化の役割も明らかにできていない。しかしながら、それぞれの修飾の諸性質や相互作用の一部などをを見出すことはできており、目的達成に向かってやや遅れているが進展はしている。
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今後の研究の推進方策 |
AQP5翻訳後修飾のそれぞれの役割を明らかにするために、引き続きin vivo唾液腺や培養細胞系を用いて研究を推進していく。しかしながら、本年度の研究結果から、AQP5リン酸化は細胞内輸送のみならず水透過チャネル機能などへの関与も想定された。従って、ツメガエル卵発現系などでリン酸化がAQP5水透過能へ与える影響も調べていく。また両修飾の相互作用について、AQP5変異体の培養細胞系のみならず単離唾液腺細胞を用いて解析し、実際に生体で起こる唾液分泌のシグナル伝達と照らし合わせながら研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度繰越金は3月期の未支払分である。平成24年度研究費は概ね当初の予定通り、本研究に必要な実験試薬および器具類、成果発表のための旅費等に使用する。水透過能解析のための実験機器類は既に所有しており、実際の遂行諸費用(試薬類)は申請額から捻出可能である。
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